特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「チップ型ヒューズ」に関する特許(特許第5737664号)の特許権者である控訴人(松尾電機株式会社)が、被控訴人(台湾法人・功得電子工業股份有限公司)による製品の譲渡等が特許権侵害に当たるとして、差止め及び1000万円の損害賠償等を求めた事案の控訴審である。本件特許は、ヒューズと端子とが一体に形成されたチップ型ヒューズに関するもので、従来技術と比較して製造が容易であることを特徴とする。被控訴人製品は、本件発明1(請求項1)の構成要件のうち「2つの平板状部がケースの周壁部にそれぞれ接触している」という構成要件Cを充足しないことに争いがなく、控訴人は均等侵害の成立を主張した。原審(大阪地裁)は、均等侵害の成立を認めず、また、控訴人が追加した本件発明2(請求項3)に基づく請求原因の追加も訴えの変更として不許可とし、控訴人の請求を全部棄却した。 【争点】 1. 本件発明1に係る均等侵害の成否(特に第2要件〔置換可能性〕及び第4要件〔公知技術等の非該当〕) 2. 本件発明2に基づく請求原因の追加の許否 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却した。第一に、均等侵害の第4要件(公知技術等の非該当)について、被控訴人製品の構成は、公知の乙1発明(表面実装超小型電流ヒューズ)において可溶線と金属電極を別部材で構成する点のみが相違するところ、乙3発明にはヒューズエレメント部と外部電極を一体の金属で形成する構成が開示されていると認定した。両発明は同一の技術分野に属し、乙1公報にも「製造が容易」「量産性に優れている」との記載があることから、製品構造の簡素化による「生産性の向上」という課題は乙1発明にも内在しており、当業者が乙3発明の構成を適用する動機付けは十分にあると判断した。したがって、被控訴人製品は出願時に容易に推考し得たものであり、第4要件を満たさないとした。第二に、本件発明2に基づく請求原因の追加について、控訴審は、特許権侵害訴訟における請求項の選択は攻撃方法の選択の問題であり、訴えの変更には当たらないと判示し、原審の民事訴訟法143条1項ただし書の適用は誤りであるとした。しかし、同法157条1項の時機に後れた攻撃方法として却下すべきであると判断した。被控訴人が答弁書で第4要件を争う詳細な主張を提出した段階で請求原因の追加を検討可能であったにもかかわらず、約9か月間の主張立証を経て裁判所の心証開示を受けた後に突然追加したものであり、少なくとも重過失が認められるとした。