特許権移転登録手続請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「筋肉電気刺激装置」とする特許権の帰属が争われた事案の控訴審である。被控訴人(台湾企業・翰沃生電科技股份有限公司)は、EMS(筋肉電気刺激装置)のODM企業として開発・製造を業務としており、身体貼着型コードレスEMSの開発に長い経験を有していた。被控訴人は、控訴人(日本企業・株式会社MTG)に対し、当該特許に係る発明の特許を受ける権利を有するのは被控訴人であるとして、特許法74条1項・123条1項6号に基づき、特許権の移転登録手続を請求した。原審(東京地裁)は被控訴人の請求を認容し、控訴人がこれを不服として控訴した。なお、本件特許出願は控訴人が出願人である原出願からの分割出願であり、被控訴人は原出願の出願人ではなかった。 【争点】 (1)本件発明の特徴的部分はどこか。(2)被控訴人が本件発明の特許を受ける権利を有する者であるか否か。(3)控訴人が本件発明の特許を受ける権利を共有する者であるか否か。(4)本件原出願の特許出願人ではない被控訴人が、分割出願である本件特許に係る特許権の移転請求を行うことができるか否か。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却し原判決を維持した。争点1について、構成要件G・H・J(リード部をケース内壁に沿って折り曲げ、制御基板と平行に折り曲げてねじ止めで固定するいわゆるZ型構造)が本件発明の特徴的部分であると認定した(この点は当事者間に争いがない)。争点2・3について、被控訴人はEMSのODM企業として開発・製造を業務としていたのに対し、控訴人はファブレスメーカーであったこと、被控訴人代表者X1が金属弾片による導通の接触不良という課題を認識し、平成26年4月頃にZ型構造を着想・開発していたこと、控訴人はこれらの構成を着想又は具体化したとはいえないことから、発明者は被控訴人代表者X1であり、控訴人の従業員等は発明者にも共同発明者にも当たらないと判断した。争点4について、特許法74条1項は真の発明者の保護を目的とした規定であり、請求権者が特許出願したことを要件とするものではないとした。また、特許法44条1項は分割出願手続における原出願の出願人と分割出願の出願人の一致を前提としているが、一旦発生した特許権の移転請求においてまで出願人の一致を要求しているとは解されないとして、被控訴人が原出願の出願人でないことは移転請求の妨げにならないと判示した。