地位確認及び損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告ら(保健師2名)は、紹介予定派遣により派遣会社プライマリーに雇用され、ゲーム・映像等のコンテンツ制作会社である被告会社の人事部健康相談室で産業保健業務に従事していた。原告Aは平成30年4月から同年9月まで、原告Bは同年4月から同年10月まで派遣期間が設定されていた。被告会社の産業医である被告Cの下で保健師業務を行っていたが、同年6月15日の内々定者向け健康診断の際、健診結果のダブルチェックに関する指示をめぐって被告Cとの間でミスコミュニケーションが生じた。これを契機に被告Cの原告らに対する態度が変化し、定例ミーティングの廃止や無視等の行為が行われた。派遣期間満了後、被告会社は「産業医と円滑な協力体制の構築に至らなかった」として原告らの直接雇用を拒否した。原告らは、被告会社との間に労働契約が成立していると主張して地位確認・未払賃金を求めるとともに(主位的請求)、直接雇用拒否の不法行為に基づく損害賠償(予備的請求)、及び被告Cのパワーハラスメントに基づく損害賠償を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)被告Cによるパワーハラスメントの有無及び被告会社の使用者責任・安全配慮義務違反の成否、(2)紹介予定派遣において原告らと被告会社との間に直接労働契約が成立するか(派遣労働契約の無効、就労始期付き労働契約の成立、合理的期待に基づく契約成立の3つの構成)、(3)直接雇用拒否の不法行為該当性である。 【判旨】 裁判所は、パワーハラスメントについて、原告らが主張した仕事外しの大部分(衛生委員会出席拒否、衛生講話の取上げ、職場巡視拒否等)は、カルテ整理業務を優先するための合理的な業務指示であるとしてパワーハラスメントに当たらないと判断した。しかし、定例ミーティングの一方的な中止・廃止については、原告らとの会話を避ける不当な目的の下で行われたものであり、業務上必要な認識の共有手段を奪うものとしてパワーハラスメントに該当すると認定した。また、業務上の声掛けへの無視や退院後の差別的対応も、一連の不法行為と認めた。被告会社の使用者責任も肯定したが、安全配慮義務違反は否定した。 労働契約の成否については、紹介予定派遣では特定行為(事前面接等)が法律上許容されており、被告会社の面接・内定は特定行為にすぎず派遣労働契約を無効とする事情にはならないとした。また、紹介予定派遣は直接雇用に至らない場合があることを制度上の前提としているため、派遣開始時に就労始期付き労働契約が併存的に成立することはないとした。さらに、直接雇用に向けた期待についても、採用行為が具体的に進展しておらず、協力態勢構築の失敗の一端は原告らにもあるとして、法的保護に値する合理的期待とは認められないとした。 結論として、パワーハラスメントに基づく慰謝料として原告ら各自10万円の連帯支払のみを認容し、地位確認請求・未払賃金請求及びその余の損害賠償請求はいずれも棄却した。