特許料納付書却下処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社コンピュータ・システム研究所)は、「建築物品質評価装置、その方法、プログラムおよび記憶媒体」に関する特許(特許第6127102号)の特許権者であった。原告は、本件特許の出願及び特許料の納付管理業務を弁理士(以下「本件弁理士」)に委任していたが、第5年分の特許料の納付期限(令和3年4月14日)までに納付がされず、追納期間の末日(同年10月14日)までにも納付がされなかった。そのため本件特許権は消滅したものとみなされた。原告は令和4年3月22日付けで特許料納付書及び回復理由書を提出し、追納期間内に納付できなかったことについて正当な理由がある旨主張したが、特許庁長官は同年12月1日付けで、旧特許法112条の2第1項所定の「正当な理由」があるとはいえないとして却下処分をした。原告はこの却下処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 1. 旧特許法112条の2第1項の「正当な理由」の有無(本件弁理士がうつ病により特許料を納付できなかったか) 2. 経過措置(附則2条8項)にかかわらず、救済要件を緩和した新特許法を遡及適用すべきか、同経過措置規定が憲法29条2項に反し無効か 3. 経過措置の適用や被告の訴訟上の主張が信義則に違反するか 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点1について、旧特許法112条の2第1項の「正当な理由があるとき」とは、特許権者(代理人を含む)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうと解した上で、本件弁理士は追納期間中に原告の別件の商標登録料や特許料を複数回にわたり納付し、手続補正書や意見書も提出していた事実を認定し、本件特許料に限り納付できなかった客観的事情は認められないと判断した。原告が主張する本件弁理士のうつ病についても、診断書その他の客観的証拠はなく、別件の納付状況に照らせば納付不能とはいえないとした。争点2について、原告が援用した令和5年最高裁判決は経過措置が置かれていなかった事案に係るものであり、経過措置のある本件とは事案を異にするとした。附則2条8項の違憲主張についても、手数料額等を定める政令やシステム整備の必要性から設けられたものであり、目的は正当で合理性に欠けるとはいえないとして退けた。争点3の信義則違反の主張もいずれも採用しなかった。