AI概要
【事案の概要】 知的障害及び身体障害を有し、被告(大分県)が設置する特別支援学校の高等部に通学していた生徒e(当時17歳)が、平成28年9月15日の給食時間中にランチルームで食物を喉に詰まらせて倒れ、搬送先の病院で同年10月2日に低酸素性脳症により死亡した事故について、eの両親(原告a・b)及び兄弟姉妹(原告c・d)が、被告に対し、主位的に民法715条(使用者責任)、予備的に国家賠償法1条1項に基づき、合計約3億7260万円の損害賠償を求めた事案である。eには食物を咀嚼せずに丸飲みする傾向があり、教職員もこれを認識していた。事故当日、eの担任教諭hは、他害傾向のある生徒Gを教室に連れていくためランチルームを離れる際、他の教職員にeの見守りを依頼せず、eを一人残した。その約3分後にeは倒れているのが発見され、口腔内から大量の食物残渣が確認された。 【争点】 (1)被告が民法715条に基づく使用者責任を負うか、(2)教職員らの注意義務違反の有無、(3)注意義務違反とeの死亡との因果関係、(4)原告らの損害額。被告は、本件は公権力の行使に該当し民法715条の適用はないこと、eの摂食に窒息の危険性はなかったこと、死因は窒息ではなくてんかん発作等による可能性があること等を主張した。 【判旨】 一部認容・一部棄却。裁判所は、まず争点(1)について、県立学校の教職員の行為は「公権力の行使」に当たるとして、原告らの民法715条に基づく主位的請求を棄却し、国家賠償法1条1項に基づく予備的請求について判断した。争点(2)について、特別支援学校の教諭には、児童生徒の障害の特質に照らした安全配慮義務があるとした上で、eには食物を丸飲みする傾向があり窒息の危険を伴うものであったこと、教職員もこれを認識していたことから、担任hにはeの給食時間中にランチルームでeから目を離すことなく常時見守り、窒息等を防止すべき義務(見守り義務)があったと認定した。hがGと共にランチルームを出る際、他の教職員に見守りを依頼することなくeを一人残したことは同義務に違反すると判断した。争点(3)について、eの死因は窒息による低酸素性脳症であると認定し、てんかん発作や誤嚥の可能性を排斥した上で、hがi・jらに声掛けをして見守りを依頼していれば、eの丸飲み行為を制止するなどして事故を防げたといえるから、義務違反と死亡との因果関係を肯定した。損害については、治療費約16万円、葬儀費用150万円、死亡慰謝料2200万円を認め、逸失利益は障害基礎年金の受給可能性についても検討したが認めなかった。既払の災害共済給付金2800万円を控除するとeの損害請求額は0円となるが、原告a・bの固有慰謝料各300万円及び弁護士費用各30万円を認め、被告に対し各330万円の支払を命じた。原告c・dの請求は棄却した。