商標権侵害行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 昭和34年創刊の左派系論壇誌「現代の理論」は、発行主体を変えながら断続的に刊行されてきたが、平成24年に紙媒体として一旦終刊となった。第1審原告(X)は「現代の理論編集委員会」の一員として平成26年以降、電子版「現代の理論」を発行するようになった。同じ頃、第1審被告NPO(特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム)も雑誌「現代の理論」の再刊を決定し、平成28年6月以降、被告出版物1を、平成29年10月以降は被告出版物2(発行元は第1審被告会社・同時代社)を発行するに至った。このような中、「現代の理論」の文字からなる商標の設定登録を受けた第1審原告が、第1審被告らに対し、商標法36条に基づく出版物の出版・販売等の差止め・廃棄及び損害賠償を求めた。原審は差止め・廃棄請求を全部認容し、損害賠償を17万5808円の限度で認容したところ、双方が控訴した。 【争点】 (1) 本件各商標と被告各標章の同一性・類似性、(2) 本件各商標権の指定商品と被告各出版物の同一性・類似性、(3) 本件商標2の商標登録無効の抗弁、(4) 被告NPOの先使用権の抗弁、(5) 権利濫用の抗弁、(6) 損害額。当審では特に権利濫用の抗弁(争点5)と損害額(争点6)が中心的争点となった。 【判旨】 控訴審は、争点1〜4については原審の判断を維持し、本件各商標と被告各標章は類似しており、被告各出版物は指定商品に類似する商品に該当するとした。商標登録無効の抗弁及び先使用権の抗弁については、「現代の理論」の標章が第1審被告NPOの業務に係る商品として需要者の間に広く認識されていたとはいえないとして、いずれも排斥した。権利濫用の抗弁については、第1審原告が本件各商標を使用して雑誌を発行する予定がなくとも、少なくとも第9類「電子印刷物」を指定商品とする商標権に基づく差止請求をなし得ること、雑誌の精神を誰が引き継いでいるかは権利関係の帰属と異なり客観的判断が困難であること等を理由に、権利濫用の主張を退けた。損害額については、被告出版物2(5)〜(26)の売上額を761万9005円と認定し、相当使用料率3%を乗じた22万8570円に弁護士費用相当額2万円を加えた24万8570円の損害賠償を認めた。結論として、第1審原告の控訴及び請求拡張に基づき原判決を一部変更し、第1審被告らの控訴は棄却した。