特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(住友重機械工業株式会社)は、「アシスト装置」に関する特許第6890407号(請求項1〜5)の特許権者である。本件特許発明は、人体の第一部分と第二部分の間の関節の動きをアシストする装置であり、減速機の固定部材と出力部材の間に配置される主軸受について、クロスローラ軸受を含まない1つの単列式転がり軸受のみ、1つの滑り軸受のみ、又は一箇所の滑り軸受のみにより構成されることを特徴とする。特許庁は、異議2021−700972号事件において、本件特許の請求項1〜5に係る特許を取り消す決定をした。特許庁は、本件特許発明はいずれも主引用例である甲1(特開2015−217440号公報)及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと判断した。原告はこの特許取消決定の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 主たる争点は、本件特許発明1〜3の進歩性判断の誤りであり、具体的には以下の3点である。(1)甲1発明の認定の誤り(甲1発明の「1つのベアリング」がクロスローラ軸受であるか否か)、(2)本件特許発明と甲1発明との相違点の認定の誤り(構成Aと構成B1を合わせたまとまりのある構成を相違点とすべきか)、(3)相違点についての容易想到性の判断の誤り(アシスト装置向けの減速機の当業者にとって、耐荷重の高いクロスローラ軸受から耐荷重の低い単列式転がり軸受等に置換する動機付けがあるか)。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、原告の取消事由をいずれも採用できないと判断した。第一に、甲1発明の認定について、甲1の図3の主軸受の中央には「円」の記載があるが、軸受の技術分野において玉軸受の玉を図中に円で示すのが一般的であり、クロスローラ軸受の表記である菱形とは異なるため、甲1発明における「1つのベアリング」が玉軸受であるとまで断定することはできず、クロスローラ軸受であるとも即断できないとして、主軸受である1つのベアリングについて具体的に特定されていないとする本件決定の認定に誤りはないとした。第二に、相違点の認定について、構成B1に係る相違点の判断に当たり構成Aが前提となっているという技術的コンテキストを踏まえた判断が必要であるとの原告の主張を取消事由1(3)において考慮することとした。第三に、容易想到性について、本件決定の判断はアシスト装置用減速機と産業用ロボット用減速機の違いを踏まえ、アシスト用減速機においていかなる主軸受が選択されるかという点に着目した議論であり、単なる機械要素としての単列式転がり軸受の周知性を根拠とするものではないとした。アシスト装置では産業用ロボットと異なり主軸受にかかる荷重が小さいことは構造上明らかであり、当業者が荷重の方向や大きさを計測して周知の軸受から最適なものを選択することは通常の創作能力の発揮にすぎないとして、進歩性を否定した本件決定に違法はないと結論づけた。