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【事案の概要】 原告(エルメス・アンテルナショナル)は、平成30年10月25日、橙色と茶色の色彩の組合せのみからなる商標(いわゆる「オレンジボックス」の配色)について商標登録出願をしたが、特許庁から拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は令和5年4月6日、本願商標は色彩のみからなるものであり、指定商品・役務について使用しても需要者が出所表示として認識できないとして、商標法3条1項3号及び6号に該当し、かつ使用による自他商品役務識別力の獲得(同条2項)も認められないとして、審判請求を不成立とする審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 本願商標(橙色と茶色の色彩の組合せのみからなる商標)が、使用により自他商品役務識別力を獲得したといえるか(商標法3条2項の適用の可否)。具体的には、(1)エルメスブランドの著名性及びオレンジボックスの使用状況、(2)需要者の認識(アンケート調査の評価)、(3)指定商品「香料」及び「紙製箱」等における本願商標の使用の有無、(4)色彩商標の独占適応性が争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、色彩は商品等に自ずと付随する特性であり、色彩のみからなる商標が自他商品役務識別力を有するためには、使用による識別力獲得等の特段の事情が必要であると判示した。その上で、本願商標は単なる橙色と茶色の組合せではなく、箱全体の橙色とその上部輪郭を縁取る茶色を組み合わせた特有の構成を有する点を正しく理解すべきとした。しかし、エルメスブランドが著名であり、オレンジボックスの使用及び宣伝広告を通じて高級ファッションブランド商品の購入者等の間では認識が浸透していると認めつつも、本願の指定商品・役務は安価な日用品も含む多岐にわたるものであり、需要者は一般消費者を広く想定すべきであるから、「HERMES」の文字商標や図形商標を離れて色彩商標それ自体からエルメスブランドを認識できるに至っているとは直ちに認められないとした。原告提出のアンケート調査についても、対象者が高所得者層やファッションに関心の高い層に限定されており、一般消費者の認識を的確に示すものとはいえず、認定証拠として不適当とした。さらに、指定商品のうち第3類の香料及び第16類の紙製箱等については、原告が商品として製造・販売している事実も小売等役務を提供している事実も認められず、これらの指定商品・役務について識別力の獲得を認める余地はないとした。