AI概要
【事案の概要】 本件は、「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム」に関する特許(特許第4555901号、以下「本件特許」)の特許権を有する原告(株式会社DAPリアライズ)が、被告(株式会社NTTドコモ)による携帯電話端末等の各製品(被告補助参加人シャープ及びFCNTが製造)の販売が本件特許権の侵害に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条、特許法102条3項)により、損害額合計115億5700万円の一部である1000万円の支払及び遅延損害金を求めた事案である。本件発明は、携帯情報通信装置において、無線通信手段が受信した高解像度画像データを中央演算回路が処理し、グラフィックコントローラが単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み・読み出しを行い、ディスプレイパネル及び外部ディスプレイ手段に画像を表示する機能を特徴とするものである。 【争点】 主な争点は、(1)被告各製品が本件発明の構成要件を充足するか(文言充足の有無)、(2)無効の抗弁の成否(明確性要件違反、訂正要件違反、サポート要件違反、新規性・進歩性の欠如、分割要件違反に起因する新規性の欠如)、(3)損害発生の有無及びその額であった。被告らは、被告各製品が「高解像度画像受信・処理・表示機能」「グラフィックコントローラ」等の構成要件を充足しないと主張するとともに、丙B9発明(携帯電話機に関する先行特許文献)等を主引用例とする進歩性欠如の無効理由を主張した。 【判旨】 裁判所は、事案に鑑み争点2-4-6(丙B9発明を主引用例とする進歩性の欠如)から判断した。裁判所は、丙B9文献の記載を詳細に検討し、本件発明と丙B9発明との一致点及び相違点を認定した。構成要件A〜F及びI〜Kは丙B9発明と一致し、構成要件G'に相当する構成も丙B9発明に認められるとした。相違点は「相違点6'」のみであり、本件発明が高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合にディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度の画像のビットマップデータを読み出し送信する機能を有するのに対し、丙B9発明はそのような機能を有するとはいえない点であった。この相違点の容易想到性について、裁判所は、丙B9文献の出願日当時、携帯電話機の表示パネルの解像度より大きい表示データを表示する場合に表示パネルと同じ解像度の表示データを生成して表示しスクロール操作で全画像を見ることは当業者の技術常識であったと認定し、丙B9発明に当該技術常識を適用して相違点6'に係る構成を想到することは容易であったと判断した。以上より、本件発明は丙B9発明に本件出願当時の技術常識を適用することにより容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法29条2項に違反し、特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告は被告に対し本件特許権を行使することができない(同法104条の3第1項)として、原告の請求を棄却した。