発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社ホットエンターテイメント)は、映像等のデジタルコンテンツの企画・制作等を業とする会社である。原告は、氏名不詳者(本件発信者)が、P2P形式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、原告が著作権を有する動画(本件動画)を自動公衆送信したことにより、原告の公衆送信権(著作権法23条)が侵害されたと主張した。そこで原告は、インターネット接続サービスを提供するプロバイダである被告(エキサイト株式会社)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)5条1項に基づき、本件発信者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレスの開示を求めた事案である。原告は本件訴訟に先立ち、株式会社utsuwa(本件調査会社)に著作権侵害調査を依頼し、同社はμTorrentを介してBitTorrentを利用し、本件発信者から本件ファイルを取得して本件動画との同一性を確認していた。 【争点】 本件の争点は、権利侵害の明白性(調査の信用性)である。被告は、(1)原告が著作物と主張する甲7と発信者が保有していた甲8が何のファイルであるか明らかでなく、両者の同一性ないし類似性は不知である、(2)本件調査で用いられたシステムは認定システムとして認められておらず、時刻やIPアドレスが正確であるか不明である、(3)調査画面上「下り速度」「上り速度」が表示されておらずデータ送信の事実が認められない、(4)複数のIPアドレスが表示されており本件ファイルが他のIPアドレスからダウンロードされた可能性がある、と主張して権利侵害の明白性を争った。 【判旨】 請求認容。裁判所は、BitTorrentの仕組み及び認定事実に基づき、本件発信者が本件ファイルに係るピースをその端末にダウンロードし、当該ピースを不特定多数の者からの求めに応じBitTorrentを通じて自動的に送信し得るようにした上、被告から割り当てられたIPアドレスを用いてインターネットに接続し、調査会社の端末に本件ファイルのピースを実際にダウンロードさせたことが認められると判断した。μTorrentはBitTorrentのクライアントソフトの一つであり、接続中のピアのIPアドレスや時刻を機械的に表示するものであって、表示に誤りがあるような事情はうかがわれず、IPアドレス及びタイムスタンプは正確であると認定した。また、「下り速度」等が表示されていない点については、ダウンロードが実際に進行しているにもかかわらず速度表示がされないことがあり得ると認め、被告の主張は判断を左右しないとした。さらに、複数IPアドレスの表示についても、μTorrentでは複数のIPアドレスのそれぞれからファイルを分割してダウンロードが行われると認められるとして、被告の主張を排斥した。以上から、権利侵害の明白性を認め、原告には損害賠償請求を予定していることから発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、プロバイダ責任制限法5条1項に基づく発信者情報の開示請求を認容した。