AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和5年8月1日頃、札幌市内の自宅において、実母であるA(当時78歳)に対し、その背部等を多数回蹴るなどの暴行を加えた。この暴行により、Aは右側胸部から背部にかけての皮下出血・筋肉内出血、右多発肋骨骨折、右肺挫傷及び右気胸等の重篤な傷害を負った。被告人は、被害者から救急車を呼ぶことを強く拒まれたため、暴行から1日以上が経過した後にようやく救急に電話したが、Aは同月3日午前11時23分頃、搬送先の病院において外傷性ショックにより死亡した。犯行の経緯について、被告人は、被害者の体調を心配してもう少し夕食を食べるよう促したものの拒まれたことから、どうして自分の気持ちを分かってくれないのかと思い暴行に及んだと述べている。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役4年に処した(求刑懲役6年、弁護人の科刑意見は懲役3年執行猶予5年)。量刑の理由として、裁判所はまず犯行態様の悪質性を指摘した。被告人は高齢の被害者に対し、胸や背中等の身体の重要部分に足蹴りするなどして多数回の強い暴行を一方的に加え、致命傷となった広範囲にわたる筋肉内出血や多数の肋骨骨折等を負わせており、凶器を用いていないものの、犯行態様は執拗かつ悪質であるとした。また、犯行動機についても、夕食を食べるよう促して拒まれたことが暴行の理由というのは身勝手かつ理不尽であり、酌むべき事情があるとはいえないと判断した。以上から、本件の犯情は悪く、親に対する凶器等を用いない傷害致死1件の事案の中では中程度に位置づけられ、一定期間の実刑はやむを得ないとした。他方、一般情状として、被告人に反省と後悔の態度が認められること、遺族である被告人の弟2名がいずれも処罰を望んでいないこと、被害者から救急車を呼ぶことを拒まれたとはいえ被告人なりに被害者を気遣い救急に電話したことを、被告人に有利な事情として考慮し、主文の刑を相当と判断した。