AI概要
【事案の概要】 旅行業等を営む株式会社の支店に勤務する被告人3名(支店長A、副支店長E、営業課長F)が、共謀の上、東大阪市から委託を受けていた新型コロナウイルスワクチン接種に係るコールセンター業務について、2か年度にわたりオペレーターの稼働人員を水増しした内容虚偽の報告書を繰り返し提出し、業務委託費を詐取した詐欺の事案である。 具体的には、同業務委託契約上、オペレーターの人員等に増減が生じた場合には契約金額を変更することとされていたにもかかわらず、実際に従事したオペレーター人員が減少した事実を秘し、人員を水増しした虚偽の内訳書及び報告書を提出した。第1の犯行(令和3年度分)では、業務委託費として約5億8900万円(うち水増し分約1億4900万円)を、第2の犯行(令和4年度分)では約3億500万円(うち水増し分約7200万円)を、それぞれ東大阪市から振込入金させて詐取した。被害総額は約8億9000万円(うち水増し分合計約2億2000万円)に上る。 被告人Fが実行行為を担い、被告人Eは令和3年9月頃に、被告人Aは令和4年1月下旬頃に、それぞれ被告人Fから過大計上の報告を受けて情を知りながらその継続を容認し、3名の共謀が成立した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人3名をそれぞれ懲役3年(執行猶予5年)に処した(求刑:懲役3年)。 量刑上重視された事情として、水増し分約2億2000万円という結果の重大性、及び東大阪市から稼働実態についての証憑類の提出を求められないことを見越して虚偽の報告書を繰り返し提出した犯行態様の巧妙さ・悪質さが挙げられた。3名の会社内での立場には違いがあるものの、担った役割に照らすと刑責に大きな差異は認められず、同程度の非難が妥当するとされた。 他方、犯行の背景として不正請求を是認する会社の企業風土が少なからず影響していたこと、被告人らが犯行によって直接的な利益を得ておらず会社のための犯行という側面が強いことから、個人責任を厳しく追及することには躊躇を覚えるとした。加えて、会社が被害金額の全額を弁償していること、被告人らがいずれも公訴事実を認めて反省の態度を示していること、量刑上考慮すべき前科前歴がないこと、懲戒解雇処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていること、被告人らの妻がそれぞれ出廷して今後の監督を誓約していること等の事情を総合考慮し、刑の執行を猶予するのが相当と判断された。