特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「空調服の空気排出口調整機構、空調服の服本体及び空調服」とする特許第6158675号(本件特許)の特許権者である原告(株式会社セフト研究所)が、電動ファン付きウエア(空調服)を製造・販売する被告ら5社(ビッグボーン株式会社、株式会社サンエス、アタックベース株式会社、大川被服株式会社、福徳産業株式会社)に対し、被告製品が本件特許の請求項3ないし9記載の発明の技術的範囲に属すると主張して、特許法100条1項及び2項に基づく被告製品の製造・譲渡等の差止め及び廃棄、並びに民法709条に基づく損害金合計5000万円(各被告につき1000万円)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許は、空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される空気排出口について、調整ベルトとボタン・ボタン孔を用いてその開口度を複数段階に簡単に調整できる機構に関するものである。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか、(2)本件各発明に係る無効の抗弁の成否(冒認出願・共同出願要件違反、明確性要件違反、公然実施発明に基づく進歩性欠如、乙37発明に基づく進歩性欠如、サポート要件違反、実施可能要件違反)、(3)権利濫用の抗弁の成否、(4)本件訂正による再抗弁の成否、(5)差止めの必要性、(6)損害額であった。裁判所は、争点(2)の進歩性欠如(争点2-3)から判断した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件公然実施発明(被告サンエス作成の平成20年頃発行カタログに掲載された品番「KU90550」の空調服製品)と本件発明1との対比を行い、両者の間に相違点a〜d(第一調整ベルトが第一取付部を有しない点、第二調整ベルトが第一取付部の形状に対応する複数の第二取付部を有しない点、空気排出口が第一取付部を第二取付部に取り付けることで形成されるものでない点、開口度が複数段階の予め定められたものでない点)を認定した。その上で、乙33公報(介護用パンツに関する実用新案)に記載された発明には、帯紐にボタンを設け複数のボタン孔のいずれかにはめ込む構成が開示されており、本件相違点に係る構成を全て含んでいると認定した。空調服と介護用パンツは共に身体に装着する「被服」の技術分野に関連性があり、紐状部材を結んで長さを調整することが手間で容易でないとの周知の課題が共通することから、本件出願前に当業者が本件公然実施発明に乙33公報記載の発明を適用して本件発明1を容易に発明できたと判断し、本件各発明はいずれも進歩性を欠くとした。さらに、原告による訂正請求(L3+L4<L5の条件等を追加)についても、本件公然実施発明及び乙33公報から訂正相違点の構成の容易想到性を否定できないとして、訂正による無効理由の解消を認めず、原告は被告らに対して本件特許権を行使することができないと結論づけた。