公務外認定処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、北海道標津町の職員として勤務していた原告が、公務に起因して抑うつ状態(適応障害)を発症したと主張し、地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定を請求したところ、処分行政庁(地方公務員災害補償基金北海道支部長)が令和2年12月21日付けで公務外の災害と認定する処分をしたことから、被告地方公務員災害補償基金に対し、当該処分の取消しを求めた事案である。原告は平成27年4月に標津町に採用され商工観光課に配属されたが、同年8月頃から不眠・抑うつ・食欲不振等の症状が現れ、同年9月8日に釧路赤十字病院で抑うつ状態(適応障害)と診断された。その後、財政課への異動を経て休職し、最終的に平成30年3月に辞職した。原告は平成30年11月に公務災害認定を請求したが、処分行政庁は公務との相当因果関係を否定して公務外認定処分を行い、審査請求も棄却されたため、令和4年6月に本件訴訟を提起した。 【争点】 抑うつ状態(適応障害)の発症及び悪化の公務起因性の有無。原告は、採用後の商工観光課での長時間労働(月100時間超の時間外勤務)や質的に過重な業務負荷、さらに財政課異動後の上司からのいじめ・パワーハラスメント(「向いてないから辞めた方がいい」「試用期間だからクビにしてもらう」「お前なんて潰そうと思えば簡単に潰せる」等の発言)が発症及び悪化の原因であると主張した。一方、被告は、原告の時間外勤務時間は月100時間を超えておらず、業務内容も新規採用職員として通常想定される程度のものであり、上司の発言もいじめには該当しないとして、公務との相当因果関係を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、公務外認定処分を取り消した。まず、精神疾患の公務起因性の判断枠組みとして、「ストレス−脆弱性」理論に基づき、平均的な地方公務員を基準として公務が精神疾患を発症・悪化させるほどの心理的負荷を加えるものといえるかにより判断すべきとした。発症時期については、症状の経過から9月8日ころと認定した。業務負荷については、原告が採用直後に小学校教員から町職員へと職種が大きく変化し、商工観光課で幅広い業務の責任者を務めたこと、7月6日から8月5日までの1か月間に合計123時間10分の時間外勤務を行い、15日連続勤務(1日平均11時間超)の期間もあったこと、上司に相談できない状況にあったことなどから、業務内容は質的にも量的にも過重であったと認定した。業務以外の負荷(クローン病の既往)については、発症の約2年前から治療を継続しており、発症時点で特段の精神的・肉体的負荷が生じていたとは認められないとした。以上から、業務による強度の精神的又は肉体的負荷が認められ、業務以外の個体側要因が特段認められないことを理由に、抑うつ状態(適応障害)の発症には公務起因性があると判断した。