佐賀空港自衛隊駐屯地建設工事差止仮処分命令申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、有明海で海苔の養殖業を営む債権者らが、国(債務者)が佐賀空港隣接地においてオスプレイ配備のための自衛隊駐屯地新設工事(本件工事)を行っていることにつき、工事の差止めを求めた仮処分命令申立事件である。本件各土地はもともと国造干拓事業により造成された土地(国造搦)であり、昭和48年に佐賀県が所有権保存登記を経た後、昭和63年にB漁業協同組合(B漁協)に売却された。その後、B漁協を含む18の漁協が合併してA漁業協同組合(A漁協)が設立され、本件各土地の所有権はA漁協に移転した。令和5年5月、A漁協の管理運営協議会(本件協議会)の臨時総会で本件各土地を債務者に売却する特別決議がなされ、売買契約が締結された。債権者らは、本件各土地の共有持分権に基づく妨害排除請求権及び妨害予防請求権としての差止請求権、並びに人格権に基づく差止請求権を被保全権利として、本件工事の仮差止めを申し立てた。 【争点】 1. 債権者らが本件各土地の共有持分権を有するか 2. 人格権に基づく差止請求の可否(戦争時及び平常時のオスプレイ墜落等による生命・身体への危険) 3. 保全の必要性の有無 【判旨】 申立てをいずれも却下。裁判所は、まず争点1について、昭和63年売買はB漁協の漁業権消滅に対する漁業補償として行われたものと認定し、漁業補償は第一次的に漁協に帰属するとの最高裁判例(平成元年7月13日第一小法廷判決)に照らし、本件各土地の所有権を取得したのはB漁協であると強く推認した。債権者らが根拠とする昭和38年申合せ等にいう「配分」の文言も、必ずしも個々の組合員に共有持分権を帰属させる趣旨とは解せず、土地を漁協が一括管理して収益を分配する方法も漁業補償として合理的な手段であるとした。また、本件各土地の配分手続が土地改良法に従って行われたとは認められないこと、売買契約書・所有権移転登記がいずれもB漁協名義であること等も踏まえ、債権者らの共有持分権取得は疎明されていないと判断した。争点2の人格権に基づく差止請求についても、戦争時の被害については戦争勃発により生命・身体が侵害される具体的危険性の疎明がなく、平常時のオスプレイ墜落事故についても、オスプレイに欠陥があることや墜落事故が生じる可能性が高いことの疎明がないとして、人格権が違法に侵害される具体的危険性は疎明されていないとした。以上により、被保全権利の疎明がないから、保全の必要性について判断するまでもなく、本件各仮処分命令申立てには理由がないと結論づけた。