発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、レコード製作会社である原告ら(ソニー・ミュージックレーベルズ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、バンダイナムコミュージックライブ、キングレコード)が、電気通信事業を営む被告(ソフトバンク)に対し、氏名不詳者らがP2P方式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentを利用したネットワークを介して、原告らがレコード製作者の権利を有する各楽曲ファイルを、公衆からの求めに応じ自動的に送信し得る状態とすることにより、原告らの送信可能化権(著作権法96条の2)を侵害したことが明らかであるとして、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、被告が保有する発信者情報(氏名、住所、電話番号)の開示を求めた事案である。調査会社が「P2PFINDER」というシステムを利用して、対象ファイルを保有するピアのIPアドレスと通信日時を特定していた。 【争点】 1. 原告らの「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)か。被告は、送信可能化行為は一旦完了すれば継続しないと主張し、また本件通信は調査会社との閉ざされた通信であり「公衆送信」の前提を欠くと争った。 2. 氏名不詳者らがプロバイダ責任制限法2条4号の「発信者」に該当するか。被告は、調査会社がピースをダウンロードしただけであり、不特定の者への送信は想定されていなかったと主張した。 3. 原告らに発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(同法5条1項2号)か。被告は、氏名及び住所で発信者を特定できるため電話番号の開示は不要と主張した。 【判旨】 請求認容。裁判所は、争点1について、BitTorrentの仕組みに照らし、ピアがネットワークに参加してピースをダウンロードしさえすれば、特段の手順を経ることなく自身のIPアドレス等の情報を把握している他のピアに対しピースをアップロードできる状態になるとし、これは著作権法2条1項9号の5イ所定の「自動公衆送信し得るようにすること」に当たると判断した。本件通信により原告らの送信可能化権が侵害されたことは明らかであるとした。争点2について、氏名不詳者らは本件通信により楽曲ファイルのピースを調査会社の端末にアップロードしたと認められ、このアップロードはプロバイダ責任制限法2条4号の「不特定の者に送信される」情報の記録に該当するとして、「発信者」に当たると認めた。争点3について、原告らが損害賠償請求等を予定しており開示を受ける正当な理由があるとし、電話番号についても、被告の保有する住所情報が誤っていた場合等に備え開示の必要性が認められるとして、被告の主張を排斥した。