AI概要
【事案の概要】 本件は、「弾塑性履歴型ダンパ」と称する発明について特許権(特許第5667716号)を有する原告(Next Innovation合同会社)が、被告(大和ハウス工業株式会社)の製造・販売する住宅に用いられているダンパが同特許発明の技術的範囲に属するとして、民法709条及び特許法102条3項に基づき、損害賠償金1000万円(損害総額1170億円の一部)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。被告製品は、長方形の鋼板をΣ型に折り曲げた形状のダンパ(被告Σ型ダンパ)を耐力パネルに組み込んだ住宅であり、遅くとも平成26年1月頃から累計3万6000棟が販売されていた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(構成要件Gの「入力」の解釈、弾塑性履歴型ダンパ該当性、補強部の存否、一対のプレートへの接続の有無、均等侵害の成否)、(2)損害額、(3)本件特許の無効事由の有無(進歩性欠如、サポート要件違反、明確性要件違反、実施可能要件違反、分割要件違反)、(4)被告製品における本件各発明の作用効果の不奏功、(5)包袋禁反言(出願時の補正による信義則上の制限)等であった。 【判旨】 裁判所は、本件明細書の記載及び本件各発明の意義を検討し、構成要件Gにおける「入力」とは「複数方向からの入力」を意味し、本件各発明のダンパは、剪断部に対して複数方向からの入力があることを前提として、その剪断部が複数方向からの入力により荷重を受けたときに変形してエネルギー吸収を行うものであると解釈した。その上で、被告ダンパは耐力パネルに組み込まれた状態で鉛直方向の力のみが加わる構造であり、地震時のねじれによる入力方向のずれも0.022度と極めて小さく、従来のI字型ダンパにおいて同一方向からの入力として想定されていた範囲にとどまることを実験結果等から認定した。したがって、被告ダンパの剪断部には本件発明1が想定する複数方向からの入力があるとは認められず、構成要件Gを充足しないと判断した。被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するとはいえず、本件発明3、6、7、8、10も発明1の技術的範囲に属することを前提とするため、いずれの発明の技術的範囲にも属しないとして、その余の争点について判断するまでもなく原告の請求を棄却した。