AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社ジィ・シィ企画)は、決済に利用される通信端末及びインターネットを利用した決済システムを開発・販売する会社であり、岡三証券を主幹事会社として東証マザーズ市場への新規上場を令和3年7月7日に予定していた。被告モビリティ(株式会社モビリティ)は、RFIDインターフェースを有する携帯電話に関する特許第4789092号(本件特許)の特許権者であり、被告Aiはその代表取締役である。被告モビリティは、原告の上場予定日の約2週間前である令和3年6月24日、原告の主幹事会社である岡三証券に対し、原告製品が本件特許権を侵害している旨及び別件訴訟を提起した旨を記載した「特許裁判に関する通知書」(本件通知書)を送付した。本件通知書には、原告の上場の適格性に影響を及ぼすため新規上場の承認を慎重に再審査すべきである旨が記載されていた。原告はこの通知を受けて岡三証券と協議し、投資家に迷惑をかけないよう予定されていた新規上場を中止した。原告は、本件通知行為が不正競争防止法2条1項21号の虚偽告知又は不法行為に該当するとして、被告らに対し約4503万円の損害賠償を求めて本訴を提起した。被告らは反訴として、原告の本訴提起が不法行為に当たるとして損害賠償等を求めた。 【争点】 (1) 本件特許権侵害についての虚偽告知の有無(充足論・無効論)、(2) 被告らと原告との間の競争関係の有無、(3) 被告らの故意又は過失の有無、(4) 被告Aiの悪意又は重過失による任務懈怠の有無、(5) 原告の損害発生の有無及び損害額、(6) 本訴提起による不法行為の成否、(7) 被告らの損害発生の有無及び損害額。 【判旨】 裁判所は、本訴・反訴ともに請求を棄却した。まず充足論について、裁判所は本件特許の構成要件の充足性を直接判断せず、無効論から検討した。争点1-2-5(甲32文献を主引用例とする新規性欠如)について、裁判所は、本件発明がサブコンビネーション発明であることを認定し、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するための」との記載は受信装置の構造・機能等を何ら特定していないとして、これを除外して請求項5に係る本件発明の要旨を認定すべきとした。その上で、甲32文献(自動改札システムに関する先行技術)に記載された発明と本件発明を対比し、構成要件J乃至Nの全てが甲32文献に開示されていると認定し、本件特許は新規性を欠き特許無効審判により無効にされるべきものであるから、被告モビリティは原告に対しその権利を行使することができないと判断した。次に虚偽告知の内容について、本件通知行為は原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実の告知であるところ、本件特許が無効にされるべきものである以上、不正競争防止法2条1項21号の虚偽の事実の告知に当たるとした。しかし、被告らの故意・過失については、本件通知行為時点で本件特許が無効となることを知っていたと認めるに足りる証拠はなく、また当時原告から特許無効の主張は一切されておらず、特許権は特許庁で特許要件を審査された権利であることも考慮すると、被告らに無効理由の調査義務まで負わせることは相当でないとして、故意・過失をいずれも否定し、原告の本訴請求を棄却した。反訴については、原告の本訴提起は不正競争行為に該当する請求であり事実的・法律的根拠を欠くものとはいえないとして、不法行為の成立を否定し、反訴請求も棄却した。