職務発明対価相当請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5ネ10090
- 事件名
- 職務発明対価相当請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年3月25日
- 裁判官
- 清水響、浅井憲、勝又来未子
- 原審裁判所
- 大阪地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告(全星薬品工業株式会社)は医薬品の製造販売等を目的とする会社であり、原告は被告の元従業員である。原告は、被告の従業者として職務発明をしたと主張し、2件の特許(本件特許1及び本件特許2)に係る発明について、特許を受ける権利を被告に承継させたとして相当の対価の支払を求めた。具体的には、本件発明1につき平成16年特許法35条3項に基づき未払の相当対価5億7500万円の内金6000万円、本件発明2につき平成20年特許法35条3項に基づき相当対価1億5552万円の内金6000万円の各支払を請求した。本件発明2は、塩酸アンブロキソールの長時間持続型(1日1回投与型)の口腔内崩壊錠(OD錠)に関する発明である。原審(大阪地裁)は、本件発明1に係る請求を全部棄却し、本件発明2に係る請求を388万8000円の限度で認容したため、原告及び被告の双方が控訴した。 【争点】 (1) 本件発明1に係る請求についての消滅時効の成否 (2) 原告が本件発明2の発明者又は共同発明者であるか (3) 本件発明1に係る相当対価についての原告の補充主張(技術指導料や退職時の100万円が本件発明1の対価として支払われたものか) 【判旨】 控訴審(知的財産高等裁判所第2部)は、原判決と同様に本件発明1に係る請求について消滅時効の抗弁を容れ、全部理由がないと判断した。本件発明2については、原判決と異なり、原告が発明者又は共同発明者であることを認めなかった。裁判所は、発明者とは自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者であり、共同発明者であるためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要すると判示した。本件発明2の特徴的部分は、制御放出微粒子等の混合物を配合し粒子径を300μm以下とする構成を満たした上で、OD錠が従来のカプセル剤の溶出規格に合致する溶出特性を示すよう各成分や構造を設定したこと等であるところ、原告の行為は市場調査に基づくOD錠化の提案や瀬踏み実験の実施にとどまり、いずれも経営判断に資する提案や予備的実験にすぎず、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したとは認められないとした。また、原告が主張した技術指導料や退職時の100万円についても、本件発明1に係る相当対価として支払われたものとは認められないとした。以上により、被告の控訴に基づき原判決中の被告敗訴部分を取り消して原告の請求を棄却し、原告の控訴を棄却した。