AI概要
【事案の概要】 原告Aは、学校法人文化学園(被告)において文化服装学院の非常勤講師・嘱託講師を務めるとともに、一般財団法人日本ファッション教育振興協会(本件財団法人)の委嘱によりファッション色彩能力検定の検定委員会委員長を務める者である。本件書籍(全189ページ)は、繊維ファッション関連業務に必要な色彩の知識・理論・技術等を扱うテキストであり、同検定3級に準拠した内容で、平成18年3月に発売され、累計発行部数は5万0400部に上る。原告は、本件書籍の共同著作物の著作者の一人として著作権(複製権)を有するところ、被告が本件書籍を無断で複製・販売していることが著作権侵害に当たると主張し、被告に対し、著作権法112条1項に基づく複製の差止め、民法709条・著作権法114条3項に基づく損害賠償1111万5248円(使用料相当額及び弁護士費用)、又は予備的に民法704条に基づく不当利得返還を求めた事案である。 【争点】 (1) 本件書籍の著作権の帰属(原告に帰属するか、被告の職務著作として被告に帰属するか) (2) 被告の故意又は過失の有無 (3) 損害額 (4) 不当利得の成否 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件書籍の著作権は著作権法15条1項(職務著作)により被告に帰属すると判断した。まず「発意」について、本件検定は被告理事長Eの指示に基づき、原告を含む被告教職員を構成員とする委員会等で検討されたものであり、本件書籍の制作は検定と同時並行で進められたことから、被告が主導的立場から企画したものと認定した。原告は本件計画案の作成者が本件財団法人であることなどを指摘したが、裁判所は、計画案からは被告が著作権者として想定されていたことがうかがわれること、被告と本件財団法人は検定実施とガイドブック発行・販売に向けて相互に連携する関係にあったことを踏まえ、原告の主張を採用しなかった。次に「職務上作成する著作物」について、原告は業務内容を「文化服装学院の業務その他付属関連する業務」とする雇用契約で被告に雇用されていたところ、検定の検討は文化服装学院の業務に付属関連する業務に当たり、その過程で制作が決定された本件書籍の執筆も同業務に該当すると認定した。さらに「著作の名義の下に公表」について、本件書籍の奥付に「Bunka Publishing Bureau」(文化出版局)の著作権表示があり、被告が「文化出版局」名義で書籍を出版している例があることなどから、被告の著作名義の下に公表されたものと認めた。以上に加え、著作権の帰属に関する契約等に別段の定めがないことから、本件書籍の著作者は被告であると認められ、原告は著作権を有しないとして、差止請求・損害賠償請求・不当利得返還請求のいずれも棄却した。