AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(フマキラー株式会社)が、被告(アース製薬株式会社)の有する特許第6539407号(発明の名称「噴射製品および噴射方法」)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。本件特許は、害虫忌避成分(EBAAP、イカリジン等)を含む噴射製品において、噴口から15cm離れた位置と30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径の比(粒子径比r30/r15)を0.6以上に調整し、かつ30cm離れた位置の50%平均粒子径r30を50μm以上とすることで、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されていても粘膜への刺激を低減できる噴射製品及び噴射方法に関するものである。原告は、害虫忌避成分を「イカリジン」とする部分について優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果が認められないと主張し、公然実施発明に基づく新規性欠如を無効理由として主張した。 【争点】 主な争点は、(1)本件訂正発明1のうち害虫忌避成分を「イカリジン」とする部分について、優先権出願1に基づく国内優先権主張の効果が認められるか(取消事由1)、(2)本件訂正発明2の粒子径比0.85以上とする構成について、同様に優先権主張の効果が認められるか(取消事由2)である。原告は、優先権出願1の明細書にはイカリジンに関する実施例がなく、第1優先日時点で発明が完成していなかったとして、優先権の効果は認められないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1について、優先権出願1の明細書等には、害虫忌避成分としてEBAAPと並んでイカリジンが明記されており、背景技術、課題、解決手段、発明の効果に関するメカニズムや各構成要件の技術的意義も記載されていると認定した。イカリジンを含む実施例自体は優先権出願2で追加されたものであるが、優先権出願1の特許請求の範囲に発明特定事項が記載されていた発明の実施に係る具体例を確認的に記載したものと理解でき、新たな技術的事項を導入するものではないと判断した。また、EBAAPとイカリジンの蒸気圧はいずれも極めて小さく、両者の蒸気圧の違いは粒子径比や50%平均粒子径r30に対して与える影響を無視できるため、当業者はEBAAPの実施例と同様にイカリジンを配合した噴射製品を製造できると認定し、「実施可能」であるとの原告の主張も退けた。取消事由2についても、粒子径比0.85以上は0.6以上の範囲を減縮したにすぎず、新たな技術的事項の導入には当たらないとして、優先権主張の効果を認めた。