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【事案の概要】 本件は、「立毛シートの製造方法」に関する特許(特許第6304634号、請求項1〜4)について、原告(白崎ベルベツト工業有限会社)が特許庁に対して無効審判を請求したところ、特許庁が令和5年2月28日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。本件特許は、被告(有限会社ブイテック)がAを発明者として平成28年12月27日に出願したものである。原告は、真の発明者はBであると主張し、進歩性欠如、サポート要件違反、新規性欠如(公知公用発明)、冒認出願の各無効理由について審決の判断の誤りを主張した。なお、原告及びBは、Bが本件特許に係る発明の発明者であり冒認出願の無効理由があると主張していたところ、Bは令和3年12月13日に死亡し、その相続人全員が相続放棄をしたことから、Bが有していた特許を受ける権利は全て原告に帰属するに至った。 【争点】 (1) 取消事由1:甲11発明及び甲12記載事項に基づく進歩性欠如についての判断の誤り (2) 取消事由2:サポート要件違反についての判断の誤り (3) 取消事由3:公知公用発明による新規性欠如についての判断の誤り (4) 取消事由4:冒認出願についての判断の誤り 【判旨】 裁判所は、取消事由3及び4に理由があるとして審決を取り消した。取消事由3(新規性欠如)について、裁判所は、甲53の1文書(平成23年10月頃に公知となった製造工程を記載した文書)及び甲2文書(平成26年7月頃に公知となった製造工程を記載した文書)の各工程が本件発明1を構成する工程を全て含むものであり、本件発明1を開示するものと認定した。そして、本件発明1は平成23年10月頃には公然知られていたと認められるから、特許法29条1項1号の規定に違反してされたものであり、無効理由があると判断した。取消事由4(冒認出願)について、裁判所は、Bが昭和50年代から京都でベルベット織物の染色加工に従事し、染色加工の具体的内容を指導していたこと、Bの陳述書の開発経緯の記載が証拠と整合すること等から、本件各発明の発明者はBであると認定した。一方、Aについては、蒸し工程に関する証言が本件明細書の記載と矛盾し、審判手続中に主張を変遷させていること等から、発明者とは認められないと判断した。したがって、本件出願は冒認出願に当たり、特許法123条1項6号の無効理由があるとした。以上より、原告の主張する取消事由3及び4に理由があり、本件審決は取り消しを免れないと結論づけた。