損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(原審原告)は、てんかん発作を一般人に正しく理解してもらう目的で、13症例のてんかん発作に関する個別のアニメーション映像から構成される映像(本件映像)を制作した者である。控訴人は、被控訴人(原審被告・株式会社アーク出版)が、動画共有サイトYouTube上に本件映像の一部(本件複製映像)を、控訴人の氏名又は屋号を著作者として表示することなく公開した行為により、本件映像に係る控訴人の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたと主張し、不法行為に基づく損害賠償として660万円(著作権法114条3項に基づく損害400万円、著作権侵害による逸失利益100万円、著作者人格権侵害による慰謝料100万円及び弁護士費用60万円)及び遅延損害金の支払を求めた。原審は55万円及び遅延損害金の限度で請求を認容し、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。本件映像は、本件書籍の付属DVDに収録されたものであり、A医師の着想に基づき、控訴人が被控訴人との間の制作委託契約に基づいて制作したものであった。 【争点】 (1) 本件映像の著作物性及び「映画の著作物」該当性、(2) 本件映像の著作者は誰か、(3) 本件映像の著作権者は誰か(著作権法29条1項の映画製作者への帰属の有無)、(4) 著作者名の表示の省略の可否、(5) 故意又は過失の有無、(6) 損害の有無及びその額、(7) 遅延損害金の起算日 【判旨】 裁判所は、本件映像について、視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、DVDに固定されていることから、著作権法10条1項7号の「映画の著作物」に当たると認めた。本件映像の著作者については、控訴人が絵コンテ、レイアウト、背景、原画及び動画の各作成並びに彩色、撮影、音響及び編集の各作業を自ら行い又は他の業者に委託した上で指示を行っていたことから、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者は控訴人であると認定した。A医師の関与は、てんかんに関する情報提供や医学的正確性の確認がほとんどであり、監修の立場からの助言にとどまるとして、著作者には当たらないと判断した。著作権の帰属については、「映画製作者」とは映画の著作物を製作する意思を有し、製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であると解した上で、控訴人との間で制作委託契約を締結し対価を支払っていた被控訴人が映画製作者に当たると認定し、著作権法29条1項により著作権は被控訴人に帰属すると判断した。したがって、著作権侵害による損害は認められないとした。他方、氏名表示権侵害については、被控訴人が控訴人の氏名又は屋号を著作者名として表示せずに本件複製映像を約3年4か月間にわたり公開し、再生回数が160万回以上に達していたことを認め、慰謝料80万円及び弁護士費用8万円の合計88万円を認容した。遅延損害金の起算日は、不法行為の終了日である令和2年12月22日とした。以上により、原判決を変更し、88万円及び遅延損害金の支払を命じた。