特許専用実施権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(エンバイロ・ビジョン株式会社)は、環境機械器具の製造・販売等を目的とする会社であり、「廃水処理装置」に関する特許(特許第7061473号、登録日:令和4年4月20日)について、特許権者である原告代表者から日本全国を対象とする専用実施権の設定を受けていた。本件特許に係る発明は、第1の収容槽でオゾンを含むマイクロナノバブルにより被処理水を殺菌処理した後、第2の収容槽で酸素を含むマイクロナノバブルを供給しつつ、活性炭が担持された担体上の好気性微生物及び通性嫌気性微生物により生物処理を行う廃水処理装置に関するものである。被告(ABBiT株式会社、旧商号エンバイロ・ソリューション株式会社)は、環境機器の企画・製造・販売等を目的とする会社であり、遅くとも令和4年4月から、排水処理システム(被告システム)を業として販売の申出をしていた。原告は、被告システムが本件特許の専用実施権を侵害し又は侵害するおそれがあると主張し、特許法100条1項に基づく差止め及び同条2項に基づく廃棄等を求めた。 【争点】 被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するか否かが争われた。被告システムが構成要件A〜C、G及びHを充足することは当事者間に争いがなく、実質的な争点は本件発明1の以下の3つの構成要件の充足性であった。 (1) 構成要件Dの充足性(第2の収容槽内に「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」を有するか) (2) 構成要件Eの充足性(活性炭が担持される担体の構造) (3) 構成要件Fの充足性(担体の空孔内における微生物の担持態様) 【判旨】 裁判所は、構成要件Dの充足性について、本件明細書の記載及び本件各発明の目的・課題の解決手段から検討した。本件各発明は、オゾンによる殺菌処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と生物処理の促進を両立させることを目的としており、第1の収容槽とは別に第2の収容槽を設け、残オゾンを積極的に酸素分子に化学変化させるために酸素を含むマイクロナノバブルを供給する構成を採用したものである。したがって、第2の収容槽にオゾンを積極的に供給することは課題の解決に至らず、構成要件Dの「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」には、オゾンが積極的に加えられたマイクロナノバブルを供給する手段を含まないと解すべきであるとした。被告システムは、第2の収容槽に当たる曝気槽内に、オゾン発生装置から得られたオゾンガス(オゾンと酸素の混合ガス)を用いたマイクロナノバブルを供給しており、オゾンが意図的・積極的に加えられていると認められるから、構成要件Dを充足しないと判断した。原告は、被告装置のマイクロナノバブル内にはオゾンよりも多くの酸素が残存しており効果的であると主張したが、裁判所は、残オゾンを早期に低減させることは本件各発明の2次的な効果にすぎないとしてこれを退けた。以上により、被告システムは本件発明1及び本件発明2のいずれの技術的範囲にも属しないとして、原告の請求をいずれも棄却した。