行政文書不開示決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(岐阜県弁護士会所属の弁護士)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)3条に基づき、死刑囚であった亡Aに関する死刑執行上申書の一切及び同書の添付資料の一切(本件対象文書)の開示を請求した。これに対し、法務大臣(処分行政庁)は、本件対象文書の存否を答えることにより法5条1号所定の個人情報及び同条4号所定の情報が開示されることと同様の効果が生じることを理由として、法8条に基づき本件対象文書の存否を明らかにしないで不開示とする旨の決定(本件不開示決定)をした。原告は審査請求を経た上で、本件不開示決定が違法であると主張してその取消しを求めた。なお、本件開示請求は亡A及びその妹で再審請求人であるBの希望に沿うものであった。 【争点】 1. 本件対象文書が法5条1号の不開示情報(個人情報)に該当するか 2. 本件対象文書が法5条4号の不開示情報(公共の安全等に関する情報)に該当するか 3. 法8条により本件対象文書の存否を明らかにしないでした本件不開示決定は違法か 【判旨】 請求棄却。裁判所は以下のとおり判断した。 争点1について、死刑執行上申書には死刑確定者の氏名、職業、本籍、住居等の個人情報のほか、罪名、裁判結果、捜査の端緒及び検挙に至った経緯等が記載され、身上調査照会書も添付されることがあり、これらは死刑確定者を容易に識別できる個人情報であるとともに、その遺族や被害者及びその遺族の名誉やプライバシーにも密接に関わる情報であるから、法5条1号の個人情報に該当し、公領域情報にも該当しないとした。原告が本件対象文書は実質的に自己情報と同視できると主張した点については、法3条は何人にも開示請求を認めており、請求の目的や開示請求者が誰であるかは考慮されないとして退けた。また、刑訴法475条2項は訓示規定であり、執行事務規程9条も上申の具体的時期を定めていないことから、検察庁の長が一定期間内に死刑執行上申書を提出する法的義務を負っているとまでは認められず、本件対象文書が確実に存在するとは認められないとした。 争点2について、法5条4号は行政機関の長に広範な裁量権を付与する趣旨であり、本件対象文書の内容は未執行の死刑確定者の強い関心の対象となるものであって、死刑執行の上申の有無が公になれば、他の死刑確定者が死刑執行順序等を予測して精神的安定を失い、自殺や逃走を試みるなど死刑の執行を不能にさせる事態が十分に想定されるとして、処分行政庁の判断に社会通念上著しく妥当性を欠くなどの裁量権の逸脱濫用があるとは認められないとした。 争点3について、本件対象文書の存否を答えるだけで法5条1号及び4号の不開示情報を開示することとなるから、法8条に基づく本件不開示決定は適法であるとした。