著作権侵害損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 ジャーナリストである原告は、奨学金問題に関する記事(平成24年4月発行の雑誌「選択」掲載)及びルポ(平成25年10月発行の書籍「日本の奨学金はこれでいいのか!」収録)の著作権を有していた。被告(株式会社朝日新聞出版)は、平成26年11月発行の雑誌「Journalism」及び平成29年2月発行の書籍「奨学金が日本を滅ぼす」において、原告の上記記事・ルポと類似する記述を含む文章を掲載・発行した。原告は、被告の各記述が原告の著作権(複製権・翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)を侵害すると主張した。加えて、仮に著作権侵害が成立しない場合でも、被告各記述は原告各記述のデッドコピーであること、被告が本件書籍に原告の氏名を表示しなかったこと、被告が社内調査の結果を原告に説明しなかったことがいずれも不法行為に該当するとして、慰謝料10万円の支払を求めた。なお、原告は先行訴訟(東京地裁令和3年提起、知財高裁控訴、最高裁上告)において同様の請求をBを被告として行ったが、いずれも棄却されていた。 【争点】 1. 著作権(複製権・翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)の侵害の成否 2. デッドコピーによる不法行為の成否 3. 氏名不表示による不法行為の成否 4. 社内調査結果の不説明による不法行為の成否 5. 損害の有無及び額 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点1について、著作権法は思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり(同法2条1項1号)、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想・アイデア・事実等の表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合は、複製にも翻案にも当たらないとした(最判平成13年6月28日参照)。その上で、原告各記述と被告各記述を個別に対比し、共通する部分はいずれも日本学生支援機構の回収金の充当方法、収支状況、延滞金収入の額といった客観的事実を簡潔に指摘するものにすぎず、具体的な表現方法もありふれたものであるとして、表現上の創作性を認めることはできないと判断した。全体として対比しても、客観的事実とこれに対する考察からなるものであり、表現上の創作性は認められないとした。争点2(デッドコピー)については、著作物に該当しない著作物の利用行為は、著作権法が保護の対象とする利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しないとし(最判平成23年12月8日参照)、本件ではそのような特段の事情は認められないとした。争点3(氏名不表示)については、著作権法19条の氏名表示権のほかに保護されるべき法令上の根拠を原告が具体的に主張していないとして排斥した。争点4(社内調査結果の不説明)については、被告記述1に関しては原告が約束したと主張する相手は被告とは別会社(朝日新聞社)であり前提を欠くとし、被告記述2に関しては被告が著者Bへの事情確認を経て書籍の出庫停止・電子書籍販売停止の判断を行い書面で回答していることから、約束を履行したと認められるとして、不法行為の成立を否定した。