偽造有印公文書行使、過失運転致死傷
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、介護施設に送迎車の運転手として採用されていたが、採用面接時に年齢を偽っていたことが発覚するのを免れるため、令和3年11月16日頃、生年月日欄の「生年」の記載が書き換えられた偽造の自動車運転免許証の写し1通を、真正に作成されたもののように装って勤務先の従業員に提出して行使した(第1の事実)。 さらに、被告人は、令和5年9月13日午後4時21分頃、普通特種自動車(車いす移動車)を運転し、介護施設の敷地内駐車場において、施設建物の近くに送迎車を移動させようと駐車枠から発進するに当たり、アクセル・ブレーキを的確に操作して安全に発進進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、ブレーキペダル上に載せていた右足を滑らせてアクセルペダルを踏んでしまい、自車が意図せず前進加速したことに狼狽して、足の位置を確認することもなくさらにアクセルペダルを強く踏み込んだ過失により、自車を時速約20キロメートルに加速させながら前方に暴走させた。その結果、約9.3メートル前方にいた利用者2名(当時89歳及び88歳)と職員1名(当時43歳)に自車前部を衝突させ、利用者2名を車底部でれき過して交通外傷により死亡させたほか、職員1名に加療約6か月間を要する右大腿挫滅創、右神経断裂等の重傷を負わせた(第2の事実)。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の事情を踏まえ、被告人を懲役3年6月の実刑に処した(求刑:懲役4年6月)。 刑を重くする方向の事情として、まず過失運転致死傷について、複数の利用者や職員が進行方向約10メートルにも満たない場所を歩行している駐車場内でアクセル・ブレーキを的確に操作するという基本的かつ重要な注意義務を怠った点で過失は重大であること、間近な位置から急加速して接近する自動車を被害者らが避けられるはずもなく、2名が死亡し1名が重傷を負うという結果も重大であること、被告人は複数の交通違反により運転免許停止処分を受けたことがあり交通安全を確保する意識が低かったことを指摘した。偽造有印公文書行使についても、年齢詐称の発覚を免れるという動機は身勝手で短絡的であり、偽造された運転免許証の写しは一見しただけでは偽造と分からない精巧なもので、身分証明書としての運転免許証の信用性を害した程度も大きいとした。 他方、被告人に有利な事情として、元勤務先の保険等により被害者らに被害弁償等がなされることが見込まれること、被告人が公訴事実を認め反省の態度を示していること、禁錮以上の刑に処せられた前科がないことを考慮した。