AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社イデア)は、令和2年8月27日、「奇跡のラカンカ」の文字を横書きしてなる商標(本願商標)について、第30類「ラカンカを加味した菓子、ラカンカを加味したコーヒー、ラカンカを加味した食用粉類」等を指定商品として商標登録出願をした。特許庁審査官は、本願商標が商標法3条1項3号(品質等表示)に該当するとして拒絶査定をした。原告は拒絶査定不服審判を請求したが、特許庁は、原査定の拒絶理由(3条1項3号)ではなく、同項6号(識別力欠如の総括規定)に該当するとして審判請求不成立の審決をした。原告は、拒絶査定の理由と異なる拒絶理由により審判請求不成立とした本件審決には手続上の瑕疵があるとして、審決の取消しを求めた。 【争点】 (1) 原査定の拒絶理由(3条1項3号)と異なる拒絶理由(同項6号)により審判請求不成立とした本件審決の手続に違法があるか。具体的には、審決の理由が商標法55条の2第1項にいう「査定の理由と異なる拒絶の理由」に当たり、新たな拒絶理由通知が必要であったか。 (2) 仮に手続上の瑕疵があるとしても、それが審決の結論に影響を及ぼすものか。 (3) 本願商標の3条1項6号該当性。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず手続上の瑕疵について、商標法の構造に照らし、拒絶理由通知にいう「拒絶の理由」とは具体的な根拠条文を示してこれに該当することの説明をするものと解すべきであり、根拠条文が異なれば原則として「異なる拒絶の理由」に当たるとした。3条1項各号はそれぞれ独立した登録拒絶事由を定めるものであり、同項3号と6号との間に概念上の包摂関係があるわけではないから、被告(特許庁長官)の判断内容が実質的に同一であるとの主張は採用できないとした。さらに、原査定では本願商標の「奇跡の」を「栄養素が豊富な」の意味合いと理解したのに対し、審決は「常識では考えられないような」程度の意味合いと理解しており、出願人に求められる防御の対象及び範囲が大きく異なるとして、両者は「異なる拒絶の理由」に当たると判断した。したがって本件審判の手続には瑕疵があると認めた。しかし、審決の結論への影響については、本件審尋書面の送付により原告に審決の理由が事前に明らかにされ弁明の機会が与えられていたこと、また、審決の拒絶理由は原告自身が意見書で主張していた本願商標の意味内容を前提とするものであり、仮に適式な弁明の機会が付与されても有効な反論はなし得なかったと認められることから、手続上の違法は審決の結論に影響を及ぼすものではないとした。念のため本願商標の3条1項6号該当性も検討し、「奇跡」の文字が飲食料品業界で「常識では考えられないような」程度の意味合いで広く宣伝広告に使用されている実情を認定した上で、本願商標は需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるとして、同号に該当すると判断した。