損害賠償請求事件、共同訴訟参加申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、静岡県沼津市に本店を置く地方銀行(取締役会設置会社)である。原告の取締役であった被告Aは、原告の創業家(X家)に関連する企業(ファミリー企業)の代表者を務めるとともに、一般財団法人ベルナール・ビュッフェ美術館(ビュッフェ美術館)の代表者代表理事でもあった。原告は、平成25年から平成29年まで8回にわたり、ビュッフェ美術館に対して合計47億6200万8000円の寄付(本件寄付)を行った。各寄付は、被告Aとの利益相反取引として取締役会の承認決議を経て実施された。本件寄付の内訳は、美術館建物の耐震工事費用、ヴァンジ彫刻庭園美術館所蔵作品の移管資金、IZU PHOTO MUSEUMの土地建物及び駐車場の購入資金などであった。原告は、本件寄付の真の目的又は主たる目的がファミリー企業に対する資金融通にあり、取締役に任務懈怠があったとして、被告A、寄付の承認決議に賛成した取締役の承継人である被告Bら、及び他の取締役に対し、会社法423条1項等に基づく損害賠償を請求した。また、原告の株主である参加原告らが共同訴訟参加をした。 【争点】 本件の争点は、(1)本件寄付による損害発生の有無(会社法423条3項の「損害」に該当するか)、(2)本件寄付に関する取締役の任務懈怠責任の有無(善管注意義務違反の有無)、(3)本件寄付による損害額である。原告側は、本件寄付が無償契約であるため全額が損害に当たると主張し、寄付の真の目的がファミリー企業への資金融通であってCSR目的は名目にすぎないと主張した。被告側は、本件寄付はクレマチスの丘の一体的運営というCSR目的に基づく高度の必要性があり、連結経常利益の2%台にとどまる合理的な範囲のものであったと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所はまず、利益相反取引として寄付が行われた場合に会社法423条3項の「損害」が発生したか否かは、寄付の全額をもって直ちに損害と認めるのではなく、取引の必要性及び取引条件等が通例的なものであったか否かにより判断すべきであるとした。次に、本件寄付の目的について検討し、第1回寄付は美術館の耐震工事等のCSR目的で実施されたと認定した。第2回ないし第7回寄付についても、ヴァンジ彫刻庭園美術館の所蔵作品をビュッフェ美術館に移管・集約し、クレマチスの丘の文化的事業を安定的に維持するというCSR目的で行われたものと認めた。第8回寄付についても、IZU PHOTO MUSEUMの土地建物及び駐車場の取得はクレマチスの丘の運営上不可欠であったとした。寄付金の約80.71%が結果的にファミリー企業から原告への融資返済に充てられた点については、改善計画に基づく資産処分と返済の一環であり、CSR目的と矛盾しないと判断した。さらに、寄付金額は原告の連結経常利益の2%程度であり、評価書に基づく適正価格で取引がされていたことから、合理的な範囲を超えるものとは認められないとして、取締役の善管注意義務違反は認められないと結論付けた。