AI概要
【事案の概要】 原告は、化粧品・健康食品・日用品雑貨等の企画・製造・販売等を営む株式会社であり、米国のChurch & Dwight社(C&D社)との販売代理店契約に基づき、酸素系漂白剤「オキシクリーン」ブランドの商品(本件商品)を日本で独占販売していた。被告は、原告の事業開発本部長等の役職を務めていた元従業員であり、C&D社との価格交渉の窓口を担当する立場にあったことから、本件商品の原価に関する情報(本件情報)へのアクセス権限を有していた。被告は、令和5年2月25日、本件情報を使用してプレゼンテーション資料を作成し(本件使用行為)、翌26日にUAEの販売代理店であるAREEN社に送付した(本件開示行為)。さらに被告は、同年4月22日及び23日、原告の社内サーバーにアクセスして本件情報に係る電子データを私物のUSBメモリ及びHDドライブに複製した(本件取得行為)。原告は、これらの行為が不正競争防止法上の営業秘密の不正使用・開示・取得に該当するとして、被告に対し、営業秘密の使用等の差止め、電子データ等の廃棄、及び損害賠償(一部請求として2524万2000円)を求めた。 【争点】 本件の主な争点は、(1)本件使用行為及び本件開示行為に係る図利加害目的の有無、(2)本件取得行為に係る故意の有無、(3)損害発生の有無及びその額の3点であった。被告は、プレゼン資料の作成・開示はAREEN社の内定を得た後に入社後のプロジェクトとして行ったものであり図利加害目的はないと主張し、また、電子データの複製は業務上の参考資料を保存する過程で本件情報が含まれていたにすぎず取得の故意はなかったと反論した。 【判旨】 裁判所は、本件情報が不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当すると認定した上で、各争点について以下のとおり判断した。争点(1)について、被告が人事異動に不満を抱いていたことは認められるものの、復讐目的でプレゼン資料を作成したとまでは認定できないとした。しかし、資料の内容が原告の競合となり得るAREEN社に対して本件商品の取引先を紹介する等の戦略を提案するものであったことから、少なくとも自己の転職活動を有利に進める目的(「不正の利益を得る目的」)があったと認め、不正競争防止法2条1項7号の不正競争に該当すると判断した。争点(2)について、被告が複製したデータには本件情報を含むJBPファイル等のC&D社関連データ661MB分が含まれており、最終出社日直前に行われたこと等から、退職後の利用目的で行われたものと認定し、故意による営業秘密の不正取得行為(同法2条1項4号)に該当すると判断した。争点(3)について、原告が主張するUSBメモリのデータ復旧費用24万2000円、弁護士費用2200万円、信用毀損300万円の合計2524万2000円のうち、弁護士費用相当損害を含め合計300万円(うち信用毀損100万円)をもって相当因果関係のある損害と認めた。以上により、裁判所は、営業秘密の使用等の差止め及び廃棄請求を認容し、損害賠償として300万円及び遅延損害金の支払を命じた。