AI概要
【事案の概要】 被告人は、熊本で暮らしていた長男(当時49歳)の妻から、長男がうつ病にり患し借金もあること、離婚を考えていること等の連絡を受け、熊本に向かった。被告人は長男の借金を返済するなど身辺整理をした上で、神奈川県横須賀市内の自宅に長男を連れ帰った。しかし、長男は行方不明になったり暴れたりし、同居を始めてからも会話はなく、被告人は長男の動静に不安を感じて外出もできない状態であった。被告人は市役所や病院などの関係機関に相談していたものの、長男との生活に思い悩み、将来への経済的不安から、長男を殺して自殺する、あるいは殺して自首するといった考えをメモに書いては破るなどしていた。同居開始から僅か7日後の令和5年7月23日午前7時40分頃、被告人は停車中の自動車内及びその付近で、長男に「頑張ってほしい。」と声をかけたが、長男が「熊本に帰りたい。」と答えたことから、これ以上の回復は期待できないと考え、長男の頸部をロープで絞め付けて殺害した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、犯行態様について、無抵抗の被害者の首をロープで絞め続けたものであり、確実に殺害しようという強い殺意が認められ悪質であると認定した。犯行に至る経緯については、被告人が親としての強い責任感から被害者を引き取り、関係機関に相談するなどし、自殺を考えるほど思い悩んでいた点には同情の余地があるとした。しかし、実際には周囲の協力や関係機関の適切な支援を受けられる見込みがあり、経済的にも切迫した状況ではなかったにもかかわらず、同居から僅か7日で被害者の回復は見込めず経済的にも生活困難と決めつけ、他人に迷惑をかけられないので殺すしかないと思い込んで犯行に及んだ意思決定は、余りに早計かつ独善的であり、相応の非難は免れないと判示した。同種事案の量刑傾向の中で重い部類には当たらないが、酌量減軽をするような軽い事案にも当たらないとし、被告人が反省していること等の事情も考慮した上で、求刑懲役10年に対し、懲役8年を言い渡した。