生活保護変更決定取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、生活保護法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた保護基準の改定(本件保護基準改定)により、生活扶助費の減額を内容とする保護変更決定処分を受けた神戸市及び尼崎市に居住する生活保護受給者らが、当該各処分は憲法25条並びに生活保護法3条及び8条に違反し、健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とする違法なものであると主張して、処分行政庁を相手に各処分の取消しを求めた事案である。本件保護基準改定は、平成25年検証に基づくゆがみ調整(生活扶助基準の展開部分の不均衡是正)と、平成20年以降の物価下落を反映するデフレ調整を内容とし、平成25年度から3年間かけて段階的に実施された。原審(神戸地方裁判所)は、控訴人B5の訴えを出訴期間経過により却下し、その余の控訴人らの請求についても、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められないとして、いずれも棄却した。控訴人らがこれを不服として控訴した。 【争点】 1. 控訴人B5の訴えが出訴期間を経過しているか否か(本案前の争点) 2. 本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否か(本案の争点)。具体的には、(a)ゆがみ調整の判断過程に統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く過誤があるか、(b)デフレ調整における生活扶助相当CPIの採用が不合理か、(c)ゆがみ調整の2分の1処理が違法か、(d)生活保護受給者への健康影響の検討を欠くことが違法かが争われた。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、まず控訴人B5について、審査請求代理人P2が裁決書謄本を平成27年10月21日に受領しており、同日に裁決があったことを知ったと認定し、再審査請求期間を徒過した不適法なものであるから、出訴期間の起算日は同日となり、訴えは出訴期間経過後に提起されたものとして却下すべきと判断した。本案の争点について、裁判所は、老齢加算最高裁判決(堀木訴訟最高裁判決等)の枠組みに従い、生活扶助基準の改定の必要性及び改定後の内容が健康で文化的な生活水準を維持できるかの判断には厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な裁量権が認められるとした上で、(1)判断の過程及び手続における過誤・欠落の観点から裁量権の逸脱・濫用の有無、(2)激変緩和措置の相当性の観点から被保護者の期待的利益や生活への影響を審査すべきとの判断枠組みを示した。その上で、ゆがみ調整・デフレ調整のいずれについても、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはなく、判断の過程及び手続に過誤又は欠落があるとは認められないとし、2分の1処理を含む激変緩和措置も合理的であるとして、厚生労働大臣の裁量権の逸脱又は濫用は認められないと結論づけ、控訴をいずれも棄却した。