行政処分義務付等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 筋萎縮性側索硬化症(ALS)により重度の身体障害を有する原告が、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護の介護給付費について、処分行政庁(吉川市長)が支給量を月413時間とする決定を繰り返したことに対し、①当該決定の取消し、②支給量を月704時間とする決定の義務付け、③国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。原告は気管切開手術後に24時間人工呼吸器を装着する生活となり、体をほとんど動かすことができず常時介護を要する状態にあったが、処分行政庁は妻による家族支援として月270時間を控除して支給量を算定していた。原告は、妻が3人の未成熟子の育児・家事・原告から引き継いだ不動産管理業務に追われ、介護を担う余力がなかったと主張した。また、自宅調査の際に被告職員が原告の文字盤によるコミュニケーションに対し「時間かせぎですか」と発言したことについても国家賠償を求めた。 【争点】 ①支給量決定における家族介護時間の控除が裁量権の逸脱・濫用に当たるか、②訪問看護時間の控除の当否、③理由付記の不備の有無、④国家賠償法上の違法性及び過失の有無、⑤被告職員の発言の違法性。 【判旨】 裁判所は、支給量の決定は市町村長の合理的な裁量に委ねられており、家族による介護時間を勘案すること自体は違法ではないとした上で、妻が現実に介護可能かつ相当な時間を個別に検討した。3人の未成熟子の育児・家事の負担、原告の症状悪化に伴う介護負担の増大、夫婦関係の悪化等の事情を踏まえ、妻による介護可能時間は月77.5時間にとどまると認定し、月270時間の控除は事実の基礎を欠き裁量権の範囲を超えて違法であると判断した。その結果、支給量は月605.5時間を下回らない時間とすべきとして、処分の一部取消しと義務付けを認容した。訪問看護21時間の控除については裁量の範囲内とした。国家賠償については、妻の育児負担の重さが社会常識に属すること、他自治体での700時間超の支給例の存在、審査会でも日中の家族支援控除に否定的であったこと等から、処分行政庁が職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったと認め、財産的損害113万7455円及び慰謝料20万円を認容した。被告職員の「時間かせぎですか」との発言についても、故意とまではいえないものの重大な落ち度による誹謗中傷的発言として国家賠償法上の違法性を認め、慰謝料5万円を認容した。