難民不認定処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 シリア国籍を有する外国人男性である原告が、入管法61条の2第1項に基づき難民認定申請をしたところ、名古屋出入国在留管理局長から難民不認定処分を受け、さらに法務大臣から審査請求棄却裁決を受けたため、不認定処分及び棄却裁決の各取消し並びに難民認定の義務付けを求めた事案である。原告は、シリア国内でアレッポに出生し、大学院博士課程に在籍しながら自動車パーツ等の輸出入会社を経営していた。原告はシリア政府への反発から約12年間にわたり徴兵猶予を申請し続け、2015年頃からは反政府的な集会を主催し、SNSでも政府批判を投稿していた。2016年と2018年の2回にわたりシリア治安機関に身柄拘束され、批判活動の中止を命じられた。2019年3月に商用目的で出国した後、徴兵猶予申請が却下され、銀行口座の凍結、会社の閉鎖、不動産の差押え等の資産凍結措置を受けた。さらに、原告の妻子も国家治安部隊から脅迫を受け、2020年4月には逮捕状なく身柄拘束された。 【争点】 主な争点は、(1)原告の難民該当性(難民不認定処分の取消事由の有無)、(2)棄却裁決の取消事由の有無、(3)難民認定義務付けの訴えの適法性であった。被告(国)は、兵役忌避は政治的意見に基づく迫害に該当しない、原告の供述には客観的裏付けがなく変遷がある、旅券の発給を受けていた事実は政府から注視されていなかった証左である等と主張し、原告の難民該当性を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の難民該当性を認め、難民不認定処分を取り消し、法務大臣に対して難民認定を命じた。まず、原告の供述について、難民認定手続時からの変遷はあるものの、SNS投稿、HTS発付の指名手配書、母の銃撃による受傷、シリア弁護士作成の手紙等の客観的証拠による裏付けがあり、長期間にわたる多数の出来事を翻訳・通訳を介して供述していることに照らせば根幹部分の信用性は否定されないとした。その上で、原告に対する資産凍結等は出国許可終期から1か月も経たずに行われており、単なる兵役忌避に対する制裁として過剰であること、反政府的集会の主催や2回の身柄拘束の経緯等を併せ考慮すると、原告の政治的意見に基づく兵役忌避を理由としてシリア政府から狙い撃ちにされたものと認定した。シリアの出身国情報から、兵役忌避者は反政府的見解を持つ者とみなされて過酷な取扱いを受けるおそれがあること、帰国時に逮捕・拘禁され重大な虐待を受ける現実的リスクがあること等を認定し、原告は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する難民に該当すると判断した。棄却裁決の取消請求は訴えの利益を欠くとして却下し、義務付けの訴えは認容した。