一時金申請却下処分取消請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5行コ14
- 事件名
- 一時金申請却下処分取消請求控訴事件
- 裁判所
- 札幌高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年5月10日
- 裁判種別・結果
- 破棄自判
- 裁判官
- 佐久間健吉、力元慶雄、佐久間健吉
- 原審裁判所
- 札幌地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 樺太(サハリン)残留邦人である控訴人が、中国残留邦人等支援法13条3項に基づく一時金の支給を申請したところ、厚生労働大臣から同条2項に定める「特定中国残留邦人等」に該当しないとして却下処分を受けたため、その取消しを求めた事案の控訴審である。控訴人は、ソ連参戦日以後に樺太で日本人の両親のもとに出生した。控訴人の兄は昭和21年12月31日以前の出生であるため当然に特定中国残留邦人等と認定されていたが、控訴人は昭和25年以降の出生であったため、厚生労働大臣の事務処理方針上、ソ連参戦以後の引揚困難事由の影響により引き続き残留を余儀なくされたことの個別立証が求められ、これを満たさないとして申請が却下された。原審は控訴人の請求を棄却した。 【争点】 控訴人が「特定中国残留邦人等」に該当するか否か。具体的には、昭和25年以降出生の控訴人が、支援規則13条の2の「昭和21年12月31日以前に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるもの」に当たるか、すなわち事務処理方針の要件(5)(ソ連参戦以後の引揚困難事由の影響により引き続き残留を余儀なくされたと認められる者)を充足するかが問題となった。被控訴人(国)は、母の究明カードに残留希望との記載があること等を指摘し、両親が自らの意思で残留を選択したと主張した。 【判旨】 札幌高裁は原判決を取り消し、控訴人の請求を認容した。裁判所は、母が前期集団引揚げ期間中に本斗町収容所に収容されていたこと、父がソ連に漁業従事を命じられていたこと等から、母は帰国を希望しながらも自らの境遇や父の事情により帰国できなかったと認定した。父の死亡後も、母はソ連国籍を取得したものの、出国許可に必要な戸籍謄本等を入手する手段がなく、日本の親族との連絡が途絶していたため帰国が実現しなかったと推認した。究明カードの「残留希望」記載については、係官がソ連国籍取得の事実をもって残留希望と評価した可能性を否定できないとし、通信調査への未返答も母に届かなかった可能性があるとして、国の主張を退けた。そして、控訴人は母によって成年まで監護養育され、特定中国残留邦人等に該当する兄と生活状況に大きな違いがなかったことから、出生年月日の違いだけで兄と全く異なる処遇とすることは支援法の目的や趣旨に沿わないとして、控訴人は事務処理方針の要件(5)に該当し、特定中国残留邦人等に当たると判断した。