AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー)が、被告(ライオン株式会社)の有する特許第6718777号(発明の名称「衣料用洗浄剤組成物」)について無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、アニオン界面活性剤((A)成分)、フェノール型抗菌剤((B)成分)、アミノカルボン酸型キレート剤((C)成分)及び特定のノニオン界面活性剤((G)成分)を所定の含有量・質量比で含む衣料用洗浄剤組成物に関するものであり、衣類が湿った状態で菌が増殖しやすい環境においても防臭効果に優れる組成物の提供を課題とする。原告は、先行文献(甲1:DCPP含有抗菌組成物に関するIP.com文献)に基づき、新規性欠如(無効理由1)、進歩性欠如(無効理由2)及びサポート要件違反(無効理由3)を主張した。 【争点】 1. 取消事由1:本件各発明と甲1発明との相違点(ノニオン界面活性剤の化合物種・含有量(相違点2)、キレート剤の含有量(相違点1)、A/C質量比(相違点3))が実質的な相違点か否か(新規性の判断の誤り) 2. 取消事由2:上記各相違点に係る構成が、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたか否か(進歩性の判断の誤り) 3. 取消事由3:(E)成分(硫酸亜鉛一水和物)やMGDA以外の(C)成分を含まない場合等についてサポート要件を充足するか否か 【判旨】 知財高裁は、取消事由1(新規性欠如)及び取消事由3(サポート要件違反)は理由がないとしつつ、取消事由2(進歩性欠如)は理由があるとして、審決を取り消した。 相違点2(ノニオン界面活性剤)について、裁判所は、甲1発明のNI(7EO)のアルキル鎖「C12からC15」の原料として天然アルコール(炭素数12及び14の直鎖アルコール)が一般に用いられていたことは出願日当時の技術常識であったと認定した。そして、本件明細書上、(G)成分は含まれていてもよいという位置付けの任意成分にすぎず、(G)成分を一般式(I)又は(II)に限定したことに格別の技術的意義は認められないとした。含有量についても、甲1発明の範囲内での設計事項にすぎないと判断した。相違点1(キレート剤含有量)及び相違点3(A/C比)についても同様に、いずれも甲1発明の数値範囲内での設計事項であると判断した。さらに、本件発明1の実施例の防臭効果の評価結果は、本件発明1に該当しない実施例と比べて一貫して優れているとは認められず、予測できない顕著な効果があるとも認められないとして、被告の効果の顕著性の主張も退けた。以上により、本件各発明は甲1発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであり、進歩性を欠くと判断して審決を取り消した。