出願却下処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、自ら開発した人工知能「ダバス(DABUS)」が自律的に生成した発明(フードコンテナ等)について、特許協力条約に基づく国際出願を行い、特許庁長官に国内書面を提出した。その際、発明者の氏名欄に「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載した。特許庁長官は、発明者として自然人の氏名を記載するよう補正を命じたが、原告がこれに応じなかったため、特許法184条の5第3項に基づき本件出願を却下する処分をした。原告は、AIによる発明(AI発明)も特許法上の「発明」に含まれ、AI発明の出願では発明者の氏名は必要的記載事項ではないとして、本件却下処分の取消しを求めた。 【争点】 特許法にいう「発明」は自然人によるものに限られるか、すなわちAIが自律的に生成した発明についても特許法上の保護が及ぶか。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、知的財産基本法2条1項が「発明」を「人間の創造的活動により生み出されるもの」の例示として規定していることから、発明とは自然人により生み出されるものと解するのが相当であるとした。次に、特許法36条1項2号が発明者の「氏名」の記載を求めていることは、発明者が自然人であることを当然の前提としており、同法29条1項の「発明をした者」も、特許を受ける権利の帰属主体となり得ない AIではなく自然人を指すと判断した。さらに、AIを発明者と認めた場合、AI・ソフトウェア権利者・ハードウェア権利者等のうち誰を発明者とすべきかについて法令上の根拠を欠くこと、「当業者」の概念をAIに適用することの困難さ、権利の存続期間についても現行法とは異なる制度設計の余地があることを指摘し、AI発明に係る制度設計は立法論として民主主義的プロセスに委ねるべきであるとした。もっとも裁判所は、原告のAI発明をめぐる実務上の懸念には「十分傾聴に値する」と述べ、AI発明に関する立法的検討を可及的速やかに行うことが産業政策上特に期待されると付言した。