公文書非開示決定処分取消等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(原告・反捕鯨団体代表者)が、和歌山県太地町の公文書開示条例5条に基づき、太地町教育委員会に対し、くじらの博物館における鯨類の売買契約書、飼育検査記録等の公文書の開示を請求したところ、取引先業者の名称・住所、振込先口座情報、鯨類の数量・単価、死亡動物の写真等の情報が同条例6条1号(個人情報)、2号(法人等の正当な利益)又は3号(事務事業情報)に該当するとして非開示とされたため、非開示部分の取消し及び開示決定の義務付けを求めた事案である。原審は、文書6の担当者氏名部分を除き、被控訴人の請求を概ね認容したため、控訴人(太地町)が敗訴部分を不服として控訴した。控訴審では、控訴人が新たに同条例6条6号(公共の安全と秩序の維持)該当性も主張した。 【争点】 (1) 各処分の理由付記の瑕疵の有無 (2) 非開示情報該当性(条例6条1号・2号・3号・6号) (3) 開示請求権の濫用の有無 主たる争点は、取引事業者を特定し得る情報や飼育検査記録の開示が、反捕鯨団体等による攻撃のおそれを理由に、事業者の「正当な利益を害する」(2号)又は「公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある」(6号)として非開示とすべきか否かである。 【判旨】 控訴棄却。大阪高裁は、原判決を維持し、以下のとおり判断した。 条例6条2号該当性について、同号により非開示とするには、開示により事業者の競争上の地位その他正当な利益が具体的に害される蓋然性が必要であり、単に害されるおそれがあるだけでは足りないとした。取引事業者の名称・住所等について、情報がインターネットで拡散され事業者の名誉が侵害されるおそれは抽象的可能性にとどまり、正当な利益を害すると認めるには至らないとした。振込先口座情報についても、取引一般で開示される口座情報にすぎず、正当な利益の侵害は認められないとした。また、くじらの博物館の飼育検査記録が研究データとして保護されるべきとの控訴人の主張に対しては、博物館は太地町の一機関であり、同号が除外する地方公共団体に該当するとして排斥した。 条例6条6号該当性について、過去に反捕鯨団体から脅迫文の送付や器物損壊事件があったことは認めつつも、それらは単発的かつ限定的であり、被控訴人の団体が犯罪行為も辞さない団体であることをうかがわせる証拠もないことから、情報開示により関係者の生命・身体等に危害が及ぶ具体的なおそれがあるとは認められないとした。死亡動物の写真についても、悪意ある拡散の可能性は具体的とは認め難く、他の手段でも入手可能であるとして、6号該当性を否定した。