住居侵入、強盗被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和4年7月26日午後3時頃、三重県松阪市内の被害者(当時82歳)方に何者かが侵入し、帰宅した被害者に対し包丁を持った状態で「金出して」「鞄の中は」などと申し向けて脅迫し、現金7万円を強取した住居侵入強盗事件である。被告人は金銭に窮し、以前消防士として119番通報で臨場したことのある被害者宅を狙ったとされた。原審(第一審)は、被告人の犯人性について合理的疑いを超える程度の立証がないとして無罪を言い渡したため、検察官が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 被告人の犯人性が争点であり、具体的には、①被害者方床面から採取された足跡痕と被告人の靴との足跡鑑定の評価、②犯人が逃走した路地に被告人が入っていくのを見たとする被害者証言の信用性、③ポリグラフ検査結果の証拠価値が問題となった。原審は、足跡鑑定について写真の不鮮明さや同種の靴の大量販売を理由に証明力を低く評価し、被害者証言については犯人の人着と被告人の特徴の不整合等から信用性を否定し、ポリグラフ検査は報道で知り得る情報が含まれるとして推認力を弱いとした。 【判旨(量刑)】 控訴裁判所は、原判決の事実認定には論理則・経験則に反する不合理な判断があるとして破棄自判した。足跡鑑定について、原審は鑑定人の豊富な経験と専門的手法を正当に評価せず、足跡写真が「若干不鮮明」というだけで鑑定結果を排斥したのは不相当であるとした。摩耗状況の共通性についても、通常の歩行による減り方だから意味がないとした原審の判断は、靴の具体的な摩耗状況が使用者ごとに異なるという経験則を正解しないものと指摘した。さらに靴底の涙状の傷等の使用特徴が足跡痕と酷似するとの鑑定判断も支持し、同種の靴が約10万足存在することを考慮しても、足跡痕と被告人の靴との結びつきは相当高いと認定した。被害者証言についても、犯人の人着の記憶が完全でないことを過大評価した原審の判断を批判し、被害者が犯人を見失って被告人を誤認した可能性は低いと評価した。ポリグラフ検査の評価のみ原審判断を是認した。総合判断として、足跡鑑定の結果、犯行直後に被害者方付近で犯人として追呼される位置にいた事実、犯行後直ちに車で逃走した行動等を併せ考慮し、被告人を犯人と認定した上で、酌量減軽を適用して懲役4年(求刑懲役5年)を言い渡した。