公職選挙法違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5う117
- 事件名
- 公職選挙法違反被告事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年5月22日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 森浩史、家入美香
- 原審裁判所
- 広島地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月施行の参議院議員通常選挙に関する公職選挙法違反(被供与)の事案である。被告人は、広島県選出議員選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者であったところ、平成31年4月3日、広島市内の被告人の選挙事務所において、Aの配偶者で衆議院議員であるBから、Aを当選させる目的をもって投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、現金30万円の供与を受けたとして起訴された。被告人は捜査段階で不起訴処分(起訴猶予)となったが、検察審査会が起訴相当の議決をしたことを受け、検察官が判断を改めて起訴に至った。原審(広島地裁)は有罪と認定し、被告人が控訴した。 【争点】 主な争点は3点である。第1に、被告人がBから受領したものが現金であるとの認識があったか。被告人は、個人演説会に遅刻しそうで余裕がなく、封筒の中身を認識していなかったと主張した。第2に、受領した現金にAの選挙運動の報酬という趣旨が含まれていることの認識があったか。被告人は、自身の市議選に集中しておりAの選挙情勢に関心がなく、選挙運動報酬の趣旨を認識できなかったと主張した。第3に、本件起訴が公訴権の濫用に当たるか。弁護人は、検察官が不起訴約束や供述誘導による供述調書を検察審査会に提供して議決を誘導したなどとして、公訴棄却を求めた。 【判旨(量刑)】 広島高裁は控訴を棄却した。現金の認識について、被告人の選挙事務所を訪れたことのなかったBが繁忙時に急遽面会を求め、挨拶もそこそこに事務所の奥へ連れて行き封筒を渡すという行動からすれば、渡された物に何ら意識しなかったというのは不自然であり、過去にもBから現金入り封筒を手渡された経験があることも踏まえ、現金の認識があったとする原判決の推認に誤りはないとした。選挙運動報酬の趣旨の認識について、被告人はAの立候補を認識し、Bとの関係を重視してその訪問を待つなどしていたこと、過去には趣旨不明の現金を返還したのに本件では趣旨を確認せず受け取ったままにしていたことなどから、報酬趣旨の認識があったと推認できるとした。公訴権濫用の主張については、検察審査会の議決を受けた起訴が職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとは到底認められないとして退けた。