商標権侵害損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、性病専門の医療クリニック「あおぞらクリニック」を運営する医療法人社団の理事長であり、「にじいろクリニック」の商標権(第44類・医業等)を有している。被告は、原告クリニックの元勤務医であり、令和3年6月に退職後、同年7月に原告クリニック新橋院から徒歩3分の場所に「にじいろクリニック新橋」を開院した。原告と被告は令和4年8月30日、被告が同年12月31日までにクリニック名称を変更し、原告商標と同一又は類似する標章を削除・撤去して今後使用しないとの合意(本件合意)をしたが、被告はこれに従わず、ウェブサイト、チラシ、看板等で「にじいろクリニック新橋」等の標章を使用し続けた。原告は、商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償2200万円、標章使用の差止め・廃棄、及び謝罪広告の掲載を求めて提訴した。 【争点】 主な争点は、(1)原告商標と被告各標章の類似性、(2)被告標章の商標法26条1項6号該当性(商標的使用でないとの抗弁)、(3)先使用権の成否、(4)商標法4条1項10号・19号の無効理由の有無、(5)権利濫用の抗弁の成否、(6)損害額、(7)差止め・廃棄の必要性、(8)謝罪広告の必要性であった。被告は、意匠化した「N」を含む標章全体として原告商標と非類似であること、被告が先に「にじいろクリニック」の名称を使用開始しており先使用権が成立すること、原告の出願が被告の営業妨害目的であり権利濫用に当たること等を主張した。 【判旨】 裁判所は、被告各標章はいずれも原告商標と類似すると判断した。被告標章1の「新橋」部分は所在地を示すにすぎず要部は「にじいろクリニック」であり、被告標章3・4の意匠化された「N」部分も「にじいろクリニック」部分と分離観察でき、要部である「にじいろクリニック」は原告商標と外観・称呼・観念において類似するとした。先使用権については、被告の商標使用開始から出願まで約半年しかなく、開院前であったことも考慮し、需要者間での周知性を認めなかった。権利濫用の抗弁についても、原告が平成30年に「nijicl」ドメインを取得していた事実等から、不当目的による出願とは認められないとした。損害額については、被告クリニックの売上高約1億7029万円に使用料率4%を乗じた681万1759円に、商標法38条5項の損害4万4900円及び弁護士費用70万円を加えた755万6659円を認容した。差止め・廃棄請求は認容したが、謝罪広告は必要性が認められないとして棄却した。