強盗致死、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、経済的困窮から強盗を計画し、包丁やガムテープ等を準備して被害者(当時64歳)方に赴いた。被告人は目出し帽・サングラスを着用し、右手に包丁(刃体約18.2cm)を持って被害者の前に立ったが、被害者からタックルを受けて仰向けに転倒し、馬乗りにされて殴打された。その後、被告人は被害者の上体を押しのけ、背後から頸部に左腕を回して包丁の刃先を顔面付近に突き付けて現金を要求したが、目的を遂げなかった。この一連の過程で、被告人が右手に持っていた包丁が被害者の左脇下に刺入し、左腋窩動静脈切断等の傷害により被害者は出血性ショックで死亡した。原審(裁判員裁判)は強盗致死罪等で無期懲役に処した。 【争点】 被告人が包丁を被害者の左脇下に「刺した」と評価できるか否か。原審は、被告人が包丁を持ち続けたまま被害者にタックルされたりもみ合いになった行為を「刺した」と評価し、これを前提に量刑判断を行った。弁護人は、被告人は意図的に包丁を刺す行為をしておらず、原判決の事実認定には誤りがあると主張した。 【判旨(量刑)】 仙台高裁は、原判決の「刺した」との認定は不合理であるとして原判決を破棄した。その理由として、(1)被告人は包丁を脅しの手段として持っていたにすぎず、被害者を刺す意図はなかったこと、(2)被害者のタックルは被告人の想定外であり、包丁の刃先を被害者に向けた状態を意図的に維持していたとは認められないこと、(3)もみ合いの過程においても、被告人が意図的に包丁の刃先を被害者に向けて握持し続けたと認定するに足りる証拠がないことを指摘した。高裁は、包丁が被害者に刺さった事態は被告人の意思に基づく行為とは評価できず、被害者の想定外の行動が介在したことが大きな要因であるとした。その上で、致死の結果に対する非難の程度は、意思に基づいて刺した場合と質的に差があり、無期懲役は重きに過ぎるとして、酌量減軽の上、懲役28年(求刑無期懲役)を言い渡した。