AI概要
【事案の概要】 本件は、「土木工事用不織布およびその製造方法」に関する特許(特許第6889970号)の無効審判の審決取消訴訟である。原告(株式会社田中)が被告(前田工繊株式会社)の本件特許について無効審判を請求したところ、特許庁は、請求項1・3〜5・7に係る発明は新規性・進歩性欠如により無効としたものの、請求項2及び6に係る発明(着色繊維の混合量が重量比で10〜90%とする構成)については進歩性を認め、審判請求を不成立とした。原告は、請求項2及び6に係る部分の取消しを求めて本件訴えを提起した。なお、被告は答弁書・準備書面を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった。 本件各発明は、白色繊維とカーボンブラックで着色した黒色繊維を混合してニードルパンチ方式で製造する土木工事用不織布に関し、斑模様により伸び率を目視で把握できること、耐候性・耐摩耗性の向上等を技術的意義とするものである。引用発明である原告製品「NK-800Z」は黒色繊維の比率が7.5%であり、本件各発明の「10〜90%」の範囲外であることが相違点2とされた。 【争点】 相違点2(着色繊維の混合量が重量比で10〜90%の範囲であるか否か)に係る構成の容易想到性。審決は、800Z製品は一定品質で製造されるものであり黒色繊維比率を変更する設計変更は通常行わないこと、製品仕様の5%を桁の異なる10%以上にすることには阻害要因があるとして、進歩性を肯定していた。 【判旨】 知財高裁は、審決の判断は誤りであるとして、請求項2及び6に係る部分を取り消した。 まず、カーボンブラックが耐候性・耐摩耗性・遮光性の向上等を目的として土木工事用シートに添加されることは技術常識であり、土木工事用防砂シートの色の濃さは白色から濃灰色・黒色まで多様であることも技術常識であると認定した。次に、本件明細書等では黒色繊維を10%未満の割合で混合した比較例との対比がなく、混合比率を10〜90%の範囲としたことに特段の技術的意義は認められないと判断した。 その上で、黒色繊維の比率を高めれば斑模様が明確になり伸び率測定が容易になるほか、耐候性等の向上効果があることは技術常識であるから、黒色繊維比率を7.5%から高める動機付けがあるとした。また、製品仕様書で比率が定められていても、仕様の一部を変更して新製品を開発することは当然行われることであり、5%から10%にすることに阻害要因があるとは認められないと判示した。以上から、本件発明2及び6はいずれも当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができないと結論づけた。