公職選挙法違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5う115
- 事件名
- 公職選挙法違反被告事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年5月23日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 森浩史、家入美香
- 原審裁判所
- 広島地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、平成31年4月5日頃、自宅において、Aの配偶者であるBから現金50万円の供与を受けたとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた事案の控訴審である。被告人は現職の市議会議員であり、広島県連の副幹事長を含む複数の役職を務め、Aと同じ地区を地盤として数百名規模の後援会を有していた。被告人はBとの間でC問題を機に関係が悪化しており、本件現金の授受にはそのような背景事情があった。原審(広島地方裁判所)は有罪と認定し、被告人側が事実誤認及び公訴権濫用を主張して控訴した。 【争点】 第一の争点は、本件現金50万円の供与に選挙運動の報酬としての趣旨が認められるか、及び被告人にその趣旨の認識があったかという事実誤認の有無である。弁護側は、Bにとって選挙戦が厳しいとは考えられない事情があったこと、被告人とBの関係が悪化しておりAのための協力依頼を期待できる状況ではなかったこと、現金交付の趣旨は専ら関係改善にあったこと、買収の趣旨を認めるには明確な依頼関係が必要であること、被告人の「Aのことは別だ」との発言に対しBが応答せず立ち去ったことは買収の趣旨を否定するものであることなどを主張した。第二の争点は、検察官による不起訴示唆ともとれる発言が違法な司法取引に当たり、それに基づく公訴提起が公訴権の濫用として無効であるかという点である。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は控訴を棄却した。事実誤認の主張について、広島県連がAの支援を行わない方針を決定しAが組織的なバックアップを期待できなかった状況は本件選挙においてAに不利に働き得る事情であり、弁護側が指摘するAに有利な事情は原判決の判断を左右しないとした。また、被告人とBの関係が悪化していたとしても、Bがその状況を打開し関係改善を通じて本件選挙においてAの当選に有利となる行動を期待して現金を供与したとの原判決の推認に誤りはなく、関係改善の趣旨を認めつつ選挙応援の趣旨は一切含まれないとする主張はむしろ不自然であるとした。買収に明確な依頼関係が必要との主張については、現金の趣旨を明示したり露骨に選挙応援を依頼することを避けるのはむしろ当然であり、関係証拠から買収の趣旨が認められれば足りるとして退けた。公訴権濫用の主張については、本件は国政選挙において現職の衆議院議員から現職の市議会議員へ50万円が供与された事案であり公訴提起に十分な悪質性があること、検察審査会の起訴相当議決を受けて再捜査の上起訴に至った経過に照らし、公訴提起が職務犯罪を構成するような極限的な場合には到底当たらないとして、所論を採用しなかった。