AI概要
【事案の概要】 先天性の聴覚障害を有し、北海道が設置する北海道札幌聾学校小学部の「二言語クラス」に在籍する原告ら(小学3年生及び小学6年生)が、被告(北海道)に対し、日本手話を十分に使用できない教員を担任として配置し、その後も適切な対応をしなかったことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の合計550万円の損害賠償を求めた事案である。原告らは、日本手話を第一言語とする聴覚障害児であり、日本手話で授業を受ける権利が憲法26条(学習権)、13条(人格権)及び14条(平等権)により保障されると主張した。 【争点】 (1) 日本手話を十分に使用できない教員を担任として配置したこと等が、原告らの憲法上の権利(学習権・人格権・平等権)を侵害するものとして国賠法上違法か。 (2) 上記配置等が、道教委及び札幌聾学校の入学前説明に反するものとして国賠法上違法か。 (3) 原告らの損害及び因果関係。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず憲法26条について、教育条件の整備を求める権利は立法措置により具体化されることで具体的権利となるところ、学習指導要領等の規定は手話を「適切に活用」するとの定めにとどまり、日本手話で授業を受ける権利を具体化したものとは解されないとした。次に、日本手話で授業を提供せず他のコミュニケーション手段を多用することが憲法26条1項の「能力に応じて、ひとしく」との定めに反するかについて、教員の育成・確保の状況に見合った教育制度を設定するという目的及び教育関係法令に則った教育と手話活用の両立を図るという目的はいずれも合理的な根拠を有し、日本語対応手話・指文字・書記日本語等を活用すれば一定水準の授業提供が可能であることから、区別は目的との関連で合理性を有するとして、不合理な差別的取扱いには当たらないと判断した。憲法13条についても、公権力に特定言語での授業を求めることは人格権の内容とはいえないとし、憲法14条についても同様に排斥した。争点(2)については、道教委や札幌聾学校が入学前に二言語クラスでは日本手話を基軸とする旨の説明をしたとは認められないとして、原告らの主張をいずれも退けた。