AI概要
【事案の概要】 衆議院議員Aの私設秘書であった被告人が、令和5年4月23日執行の江東区長選挙に立候補したBの選挙運動者として、公職選挙法違反(買収)に問われた事案である。被告人は、(1)A及び他の秘書らと共謀の上、乙党所属の江東区議会議員ら8名に対し、Bの投票取りまとめ等の選挙運動の報酬として現金合計100万円を供与し、また60万円の供与の申込みをし、(2)街宣車ドライバーとして雇ったO及びPに対し、選挙運動の報酬として合計約30万8000円を供与し、(3)選挙運動に従事したP・O・Q・Rの4名に対し、事後的に合計約26万3750円を供与したとして起訴された。 【争点】 主な争点は4つあった。第1に、区議らへの現金供与が区議選の陣中見舞いか区長選の買収かという点、第2に、ドライバーのO・Pの活動が選挙運動に当たるか、供与金が機械的労務の対価にすぎないかという点、第3に、Qへの現金10万円を被告人が交付したか否か及びQの活動が選挙運動に当たるかという点、第4に、区議Rへの現金10万円が選挙運動報酬か政治活動対価かという点である。 【判旨(量刑)】 裁判所は全争点について有罪と認定した。第1の争点につき、Aが乙党入党後も東京十五区支部長に就任できず、S区長の再選を阻む必要があったという背景事情から、区議らへの現金はBへの支援依頼の趣旨を含むものと認定した。供与対象からSと関係の深い区議を除外していたこと、金額が通常の陣中見舞いを大きく上回る20万円であったこと、複数の区議が受領を拒絶したことなどが決め手となった。第2の争点につき、「丁」の活動は告示前後を問わず選挙運動であり、被告人がドライバーらにビラ配り等の選挙運動も依頼していたと認定した。第3の争点につき、経費精算表の記載やVの捜査段階供述等から被告人がQに現金を交付したと認定した。第4の争点につき、Rの活動は選挙運動に当たり、報酬支給が許される労務者にも該当しないと認定した。被告人の公判供述については、捜査段階で自己に有利な供述を選択的に行った経緯から信用性を否定した。量刑としては、供与等の対象者12名・総額217万円超という規模の大きさ、選挙の公正が歪められた程度の大きさを指摘しつつ、前科がないことも考慮し、罰金50万円(求刑どおり)を言い渡した。なお、公選法252条4項による選挙権・被選挙権停止期間の短縮は相当でないとした。