著作者人格権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、萩原朔太郎の娘の小説「天上の花」を原作とする映画の脚本を執筆した原告が、著名な映画脚本家である被告に対し、著作者人格権(同一性保持権)侵害を理由に、損害賠償110万円及び日本経済新聞への謝罪広告の掲載を求めた事案である。原告は第10稿(準備稿)を作成したが、被告がこれを大幅に改変して第12稿(決定稿)を作成し、同稿に基づき映画が製作・公開された。被告は、打合せの際に原告が改稿に包括的に同意したと主張した。 【争点】 主な争点は、①被告による第10稿から第12稿への変更(本件変更)が原告の同一性保持権を侵害するか、②損害額、③謝罪広告掲載の必要性である。被告は、脚本家として自身の名前を連ねる以上手を入れると述べたところ原告が「よろしくお願いします」と応じたことをもって包括的同意があったと主張した。原告は、共同で脚本を作成していく認識であり、原告の関与なく被告が単独で改稿することは承諾していないと反論した。 【判旨】 裁判所は、第10稿は原告の著作物であると認定した上で、本件変更は133シーン中15シーンにわたり台詞等の内容を変更し、主人公が戦争詩を書く理由や主な登場人物の性格・心理の描写を変容させるなど、単純な字句修正にとどまらない実質的な改変であると判断した。打合せの状況や原告が第11稿受領後に不満を表明した経緯等から、被告が実質的な変更を加える場合には原告の個別の同意を要することが参加者の共通の前提であったと認め、原告の包括的同意は認められないとした。したがって、被告による本件変更は原告の意に反する改変であり、同一性保持権の侵害に当たると認定した。損害額については、原告が第12稿のメール送信に気付かなかった事情等も考慮し、慰謝料5万円及び弁護士費用5000円の合計5万5000円と算定した。謝罪広告については、本件変更により脚本がDVを正当化する内容に変更されて原告の名誉・声望が害されたとは認められないとして、請求を棄却した。