特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「食用畜肉塊の除毛装置」に関する特許権(特許第6015941号)を有する原告(マトヤ技研工業株式会社)が、被告(株式会社セイコン)に対し、被告が製造・販売する豚足脱毛機(被告製品)が本件特許の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項・2項に基づく差止め及び廃棄、並びに民法709条に基づく損害賠償金1573万8528円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許の特徴は、豚足等と温水が投入される筒状容器の内壁が平面視で多角形状に形成されている点にある。被告は、構成要件の非充足、損害の不存在・推定覆滅、消滅時効等を主張して争った。 【争点】 (1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件A〜C、E、Gの充足性)、(2) 損害の発生及びその額(特許法102条2項の推定、推定覆滅の可否)、(3) 消滅時効の成否、(4) 差止め及び廃棄の必要性の有無。特に、構成要件Cの「多角形状」に凹多角形(星形多角形)が含まれるか、また被告製品の独自の性能による推定覆滅が認められるかが中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、被告製品は本件発明の構成要件をいずれも充足すると判断した。構成要件Aについては、被告製品に投入されるのは54〜67℃程度の「温水」であり、豚足洗浄機としても使用可能であることは充足性を否定しないとした。構成要件Cの「多角形状」については、特許請求の範囲及び明細書の記載から、凸多角形に限定されず凹多角形も含まれると解釈し、被告製品の内壁が凹多角形状(突部を有する星形多角形)であっても、内角の働きにより豚足が不規則に跳ね返り曲面内壁では得難い脱毛効果が発揮されるとして、充足を認めた。 損害額については、被告製品10台の合計販売額2572万9668円を認定した上で、被告が書類提出命令に応じて提出した証拠の大半が黒塗りであったことから、認定可能な経費に基づき利益率31.2%と算定し、限界利益を802万7656円と認定した。原告が主張する利益率6割超の真実擬制は合理的でないとして退けた。推定覆滅については、被告製品の上下方向の動きによる脱毛効果への影響の程度等が必ずしも明らかでないとして、覆滅割合を5%にとどめた。消滅時効については、原告が令和元年12月頃に侵害事実を認識したと認定し、令和3年3月の提訴は3年以内であるとして時効の成立を否定した。 以上により、差止請求を認容し、廃棄請求は棄却、損害賠償として838万8273円(逸失利益762万6273円+弁護士費用76万2000円)及び遅延損害金の支払を命じた。