AI概要
【事案の概要】 亡Cは、平成29年に交通事故で高次脳機能障害(後遺障害7級4号)を負い、その後セルフネグレクト状態に陥っていた。亡Cは令和4年6月29日、被告会社が所有する賃貸マンションの一室で死亡した。被告A(被告会社の代表取締役)は、亡Cの死亡翌日の同月30日、亡Cから被告会社への本件土地・建物の所有権移転登記を申請し、その後被告会社は第三者に2150万円で転売した。亡Cの母である原告が、被告Aに対し不法行為に基づく損害賠償を、被告会社に対し会社法350条に基づく損害賠償を求めた事案である。 【争点】 主な争点は、本件売買契約書が亡Cの意思に基づいて作成されたものか否かである。被告らは、令和4年6月28日に亡Cが自らの意思で被告会社の事務所に来所し、必要書類を持参して売買契約書に押印したと主張した。また、売買代金2200万円については、亡Cの第三者からの借入金返済に充てる三者間の相殺処理により決済したと主張した。 【判旨】 裁判所は、以下の事情から、被告Aが亡Cの死亡後に亡Cの意思に基づかず本件売買契約書を作成したと認定した。①売買契約書には亡Cの署名がなく記名のみであること、②亡Cの遺留品から売買契約書の原本・写し及び実印がいずれも発見されていないこと、③契約日とされる令和4年6月28日に現金の授受がなかったことは当事者間に争いがないこと、④重要事項説明書に売買代金3000万円・住宅ローンなど本件と無関係な記載があり、亡Cに対する適正な重要事項説明がされたとは認められないこと、⑤亡Cは同月頃、高次脳機能障害により理解力が著しく低下し、セルフネグレクト状態にあったこと。また、売買代金の支払に関する被告らの主張についても、第三者が被告会社に2500万円もの未払金を抱えながら亡Cに2200万円を貸し付けたとする供述は極めて不合理で客観的証拠の裏付けもないとして排斥した。以上から、被告Aの不法行為責任及び被告会社の会社法350条に基づく損害賠償責任を認め、転売価格である2150万円の連帯支払を命じた。