電子計算機使用詐欺被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5う24
- 事件名
- 電子計算機使用詐欺被告事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年6月11日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 森浩史、家入美香
- 原審裁判所
- 山口地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 阿武町が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を被告人の銀行口座に誤って振り込んだ事件の控訴審である。被告人は誤振込の事実を知りながら銀行に告知せず、デビットカード決済により約2万4000米ドル相当のオンラインカジノサービスの利用権を取得し(第1事実)、さらにインターネットバンキングを通じて複数の第三者名義口座に合計約4292万円を振り込み、オンラインカジノサービスを利用し得る地位を得た(第2事実)。原審(山口地方裁判所)は電子計算機使用詐欺罪の成立を認め、被告人側が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)誤振込の事実を被仕向銀行に告知する信義則上の義務が被告人に認められるか、(2)被告人が入力した情報が刑法246条の2にいう「虚偽の情報」に該当するか、の2点である。弁護側は、振込依頼人である阿武町や仕向銀行から既に誤振込の申出がなされており、被仕向銀行は債権の成否に関する調査を終えていたのだから、被告人に告知義務はなく、また被告人は有効に成立した預金残高の範囲内で自己のパスワードを用いて送金操作をしたにすぎず虚偽の情報を入力していないと主張した。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は控訴を棄却した。告知義務について、最高裁平成15年判例が指摘する銀行実務の趣旨に照らし、受取人が誤振込である旨の認識を有していることを被仕向銀行に告知することには、組戻し手続への説得や円滑な紛争解決を可能とする重要な意義があるとした。振込依頼人側から誤振込の申出があっても、受取人自身が告知しない限り、被仕向銀行は受取人の認識を確認できず、組戻し手続への説得や権利行使の拒否といった対応をとることができないのであり、告知の有無によって銀行が執る手続は質的に異なるとして、被告人の告知義務を肯定した。虚偽の情報該当性については、電子計算機による支払委託・振込依頼の手続は、利用者が告知義務等の制限を有していないことを当然の前提としており、被告人が振込依頼等の情報を入力した以上、権利行使に何ら制限のない権利者として権利を行使する旨の情報を入力したことになるとして、「虚偽の情報」に該当すると判断した。訴訟手続の法令違反の主張についても、審理は十分に尽くされており不意打ち的な認定はないとして退けた。